1. ガチョウの ごはんは、なにが おおいの?
1. ガチョウのごはんは、ほとんど草
1. ガチョウの食事は、緑の草が中心である
ゆうがたに なると、草地で あそんで いた ガチョウが、こやに もどります。その まえに、ほんの すこしの こくもつや ぬかを もらいます。
ガチョウは、草や あおなのような みどりの えさが すきで、草地に はなして おけば、あとは 夕がたに すこし あげる だけで そだてられると、じてんには 書かれて います[1]。
ひなの ときは 3しゅうかんほど、やわらかい ねりえさを たべます。食べる ために そだてる ばあいは、出荷の 2しゅうかん ほど まえから、えいようの こい えさを たくさん あげて ふとらせます[1]。じてんでは、草を すきな ガチョウを 草地に はなして そだてる ほうほうが しょうかい されて います。
でも、草は えいようが すくなそうです。それなのに、どうして おおきく なれるのでしょう。
夕方、草地で過ごしていたガチョウが小屋に戻ります。その前に、ほんの少しの穀類やぬかをもらいます。事典によると、ガチョウは草や青菜などの緑餌を好み、草地に放して夕方に少し与えるだけで飼えるそうです[1]。
ヒナのうちは3週間ほど練り餌で育てます。食用に育てるときは、出荷の約2週間前から濃厚飼料を与えて太らせます[1]。つまり、事典で紹介される飼い方では、濃い餌は最後の短い期間で、ふだんは草地で草を食べさせています。
ところが、草は栄養が薄い食べ物です。それなのに、なぜガチョウは大きくなれるのでしょうか。答えの要点は、「質のよい草を選び、速く通しながら食べ続ける」ことにあります。次の章で、その中身を見ます。
2. 草は、おなかを どれくらいで とおるの?
2. 食べた草は、なぜ2時間ほどで通りぬけるのか
2. 草が腸を2時間ほどで通りぬける消化管の構造
ガンの なかまには、歯が ありません。草は、おなかの 中の じょうぶな ふくろ(きんい)で すりつぶすだけです[2]。
おなかの ながさも みじかく、草は 2時間いないに からだを とおりぬけると、北の 国で ガンを しらべた けんきゅうでは 書かれて います。ウシの ばあいは 2日いじょう かかります[2]。
さらに、ガンは 1分に 100回ほど 草を ついばんで、5分から 10分に 1回 フンを します[2]。1回の フンまでに、500回から 1000回も ついばむ ことに なります。
草の 中の せんいは、ガンは じぶんでは ほとんど こなせません。ある ほうこくでは、草の えいようの 3わりほどしか 取りだせないと いわれます[3]。
だから、えいようの おおい やわらかい 草を えらんで、いそいで たくさん たべるのです。ただし、これは 北の 国の ガンの かんさつで、ガチョウに ぴったり あてはまるかは わかりません。
ガチョウの おなかには、おたすけの 場所も あります。もうちょうという ところに、せんいを はっこうさせる びせいぶつが たくさん すんで いると、けんきゅうに 書かれて います[4]。
ガンのなかまには、歯がありません。草は、筋胃(砂嚢)というじょうぶな袋ですりつぶすだけです。腸も短く単純で、北極圏に近いスピッツベルゲン島の観察では、草は2時間以内に体を通りぬけるとされています。ウシなどは、48時間以上かかります[2]。
通りぬけが速いぶん、ガンは草をひっきりなしに食べます。1分間に約100回ついばみ、5〜10分ごとにフンを1回します[2]。ここで計算してみましょう。100回×5〜10分で、フン1回につき500〜1000回ついばむ計算です。2時間(120分)なら、フンは12〜24回ほどになります。もちろんこれは間隔の目安で、1日の総量ではありません。
草の繊維(セルロース)は、ガンが自分で分解することはほとんどできません。ある報告では、草の有機物の消化効率は3割前後という報告があります[3]。この数字は種や条件で変わるので、目安として見てください。
だから、ガンは質のよい草を選びます。消化率が低くても、速く大量に処理して、栄養のある部分だけを効率よく取り込む作戦です。
ガチョウの盲腸には、繊維を発酵させる微生物が多くいます。ガチョウ用の飼料でトウモロコシの一部を12%分だけ草の粉に置きかえた実験では、繊維の消化率が上がりました。24%まで置きかえると、体重の増え方は下がりました[4]。微生物が助けても、草だけで効率よく育つわけではないことが分かります。
なお、2時間という数字や、フンの間隔は、北極圏の野生ガンの観察です。日本の家畜ガチョウにそのまま当てはまるかどうかは、この資料からは分かりません。
ガン類には歯がなく、草は筋胃(砂嚢)ですりつぶされる。腸は短く単純で、スピッツベルゲンの野生ガンの観察では、草は2時間以内に腸を通りぬける。ウシなどでは48時間以上かかる[2]。通過が速いため、一度に取り込める栄養の割合は小さくなる。ある報告では、草食のガンの草の有機物の消化効率は3割前後という[3]。数値は種や条件で異なるので、目安として扱う。
この効率の低さを補うため、ガンは草をたくさん食べ、質のよい草を選ぶ。ガンは1分間に約100回草をついばみ、5〜10分ごとに完全なフンを1回出す[2]。100回×5〜10分から、フン1回あたり500〜1000回ついばむと見積もれる。2時間(120分)なら、フンは12〜24回になる計算だが、これは間隔の目安であり、1日の総量を示すものではない。質のよい草を選ぶことで、消化できない繊維を減らし、取り込める栄養の比率を上げていると考えられる。
では、繊維は全く役に立たないのか。ガチョウの盲腸には、繊維を利用できる多数の微生物がいる。Heliyon誌の2024年の論文によれば、ガチョウ用飼料でトウモロコシの一部を12%のぞうの草粉に置換すると、NDF(繊維の指標)の消化率が対照より上がった。ところが24%の置換では、体重増加が下がった[4]。盲腸の微生物は繊維の一部を利用できるが、効率は依然として低く、草粉の割合を増やせば得をするとは限らない、という結果である。
なお、2時間という通過時間とフンの間隔は北極圏の野生ガンの観察で、日本の家畜ガチョウにそのまま当てはまるかは、この資料からは分からない。では、そもそも野生のガンは、何を食べて暮らしているのか。
3. やせいの ガンは、なにを たべて くらして いるの?
3. 野生のガンは、田んぼで何を食べているのか
3. 野生のガンの食べ物:落ち籾と、渡りのための燃料
ガチョウの ごせんぞは、ヨーロッパでは ハイイロガン、中国では サカツラガンと されて います[1]。
日本に くる マガンは、夜は ぬまで ねて、昼は 近くの 田んぼで 落ちもみを たべると、けんきゅうに 書かれて います[5]。落ちもみは、いねかりの あと 田んぼに おちた おこめの つぶです。草の はや 根や くきも たべるそうです。
北海道の 宮島ぬまには、春と 秋に 6万から 7万羽もの マガンが やって くると、かんきょうしょうの ページに あります[6]。田んぼの 落ちもみは、わたりの ための 力に なると いわれます。
ガチョウの祖先は、ヨーロッパ系ではハイイロガン、中国系ではサカツラガン(シナガチョウ)とされています[1]。野生のガンは、どんな食事をしているのでしょう。
日本にくるマガンについて、伊豆沼・内沼で調べた1998年の研究があります。夜は沼でねぐらをとり、昼は周りの水田で、おもに落ちもみを食べていました。ふんの分析では、落ちもみのほか、草の葉や根、茎も食べていると分かりました[5]。
北海道の宮島沼には、4月中旬と9月下旬〜10月上旬に、最大で6万〜7万羽のマガンが飛来します[6]。田んぼの落ちもみが、渡りのエネルギーを蓄える食べ物になっているといわれます。
草と米つぶ。野生のガンは、季節や場所に合わせて、手に入りやすいものを食べているようです。それでは、人に飼われはじめたころのガンは、何を食べていたのでしょうか。
ガチョウの祖先は、ヨーロッパ系がハイイロガン、中国系がサカツラガン(シナガチョウ)とされる[1]。野生種のうち、日本に渡来するマガンの食性は、伊豆沼・内沼で1998年に調べた研究が報告している。夜は沼面にねぐらをとり、昼は周辺の水田で主に落ち籾を採食する。1998年10月〜1999年2月に月1回行った糞分析では、落ち籾のほか、草本類の葉・根・茎も食べていた[5]。ただし月別の割合は、ここでは示されていない。
北海道の宮島沼には、4月中旬と9月下旬〜10月上旬に、最大で6万〜7万羽のマガンが飛来する[6]。環境省の資料は飛来数を述べるもので、落ち籾が渡りのエネルギーになるという説明は別の紹介記事による。つまり、稲刈り後の水田は、野生のガンにとって、移動の途中に栄養を補給できる場所になっていると考えられる。
野生のガンは、草と落ち籾を、季節と場所で使い分けている。では、人に飼われはじめたガンは、何を食べたのか。意外な手がかりが、約7000年前の骨に残っている。
4. 7000年まえの ガンは、イネを たべたの?
4. 7000年前の遺跡の骨から分かる、飼われたガンの食べ物
4. 田螺山遺跡のガンの骨:窒素同位体比が示す食事の違い
中国の ちょうこうという 大きな かわの そばに、7000年ほど まえの むらの あとが あります。そこで 見つかった ガンの ほねを、大学の ひとたちが しらべました。
この ガンの なかには、そこで うまれ そだった ひなや、わたりを しない ものが まじって いました[7]。人に かわれはじめた ころの ガンかも しれません。
ほねを しらべると、そこで そだった ガンは、わたりを する ガンとは ちがう ものを たべて いたようです。田んぼの つちの 近くで そだつと、ほねの 中の ある 数字が 高く なる ことが あります。それで、イネを あげられて いた かのうせいが あると 考えられて います[7]。
ただ、「かもしれない」 までです。どの ガンが かわれて いたのかも、まだ はっきり しません。
中国・長江の下流にある田螺山遺跡は、約7000年前(7150〜6670年前)の村の跡です。ここから出たガン類の骨を、北海道大学などの研究者が調べました。その中には、地元で育った幼鳥や、渡りをしない個体が含まれていました。人に飼われはじめた初期の段階だった可能性があります[7]。ただし、どの種が飼われていたかは分かっていません。
骨のコラーゲンにふくまれる窒素同位体比を調べると、地元育ちの個体は、渡り鳥とは別のグループに入りました。つまり、食べ物が渡り鳥とちがっていたとみられます。水田の土では窒素同位体比が高くなる傾向があり、栽培されたイネを与えられていた可能性が指摘されています[7]。肥料の影響という説明もありますが、著者らはその可能性は低いとしています。
「世界最古の家禽」という言い方は、研究者の主張で、議論もあります。ここで確かなのは、7000年前の人とガンの間に、すでに「食べ物を与える」関係があったかもしれない、という手がかりが骨に残っていることです。
中国・長江下流の田螺山遺跡では、較正年代で7150〜6670年前にあたるガン類の骨が出土した。地元で育った幼鳥や渡りをしない個体が含まれ、ガン類の家禽化の初期段階とみられる。ただし、飼われた種は特定できていない[7]。
骨コラーゲンの窒素同位体比を比べると、地元育ちの個体は、渡り鳥の個体より高い群に入った。食べ物が異なっていたことを示す。水田土壌では窒素同位体比が上がるため、栽培イネを与えられた可能性が指摘される。肥料の影響という説明も考えられるが、論文の著者はその可能性は低いとする[7]。ここまでは「可能性」であり、イネを食べていたと断定できる段階ではない。
「世界最古の家禽」という位置づけは研究者の主張であり、議論がある。それでも、この結果は、前の章で見た野生ガンの食性と並べると、つながって見える。野生のガンは水田の落ち籾や草を食べ、田螺山のガン類は、人から栽培イネを与えられていた可能性がある。ガチョウの「草が主食」という姿は、人との長い付き合いの中で形づくられてきたのかもしれない。
5. 草を ついばむ はやさを、じぶんの ゆびで ためして みよう
5. 100回のついばみを、自分の指で体験する
5. 数字を自分の手で確かめ、原典に当たる
きょう できる こと
とけいの 秒しんを 見ながら、1分かん、つくえを ゆびで トントンと たたいて みましょう。ガンは 1分に 100回ほど 草を ついばむと いわれます。100回は、2秒に 3回ちかい はやさです。やってみると、ずっと つづける ことが たいへんだと わかります。
しらべる とき
こうえんの 池などで 水鳥を 見かけたら、草を たべる ようすを ながめて みましょう。ちかよらず、えさは あげないで ください。
指でガンの速さを体験する
時計の秒針を見ながら、1分間、机を指でトントンとたたいてみましょう。ガンは1分間に約100回草をついばむ、という観察があります[2]。100回は、2秒に3回ほどの速さです。やってみると、それを何分も続ける食べ方の忙しさが、実感できます。
水辺で観察するなら
公園の池などで水鳥が草を食べているのを見かけたら、遠くからながめてみましょう。くちばしを動かす速さや、地面に頭を下げている時間を、数えてみてください。近づかず、餌はあげないでください。
資料を読むなら
家にある米つぶと、庭や公園の草の葉を見くらべてみましょう。ガンがどちらを食べると、体の中で何がちがうのか、想像してみてください。宮島沼の飛来数は環境省のページ[6]で読めます。
手で確かめる
時計の秒針を見ながら、1分間、机を指でたたいて100回に近づけてみる。これは、ガンのついばみの回数[2]に近い。それを5〜10分続けると、フン1回までにガンがついばむ回数と時間の長さを体感できる。
資料を読むなら
田螺山遺跡の骨の分析は、PNASの論文[7]に、窒素同位体比の図とともに載っている。英語だが、地元育ちの個体と渡り鳥の個体の違いが、図で確認できる。野生のマガンの食性は日本鳥類学の報告[5]、飛来数は環境省のページ[6]、腸の速さとフンの間隔は北極圏の研究者の解説[2]で読める。ガンが食べる草の種類や、短い腸で栄養を取りこむしくみは、ほかの鳥と比べると何が違うのだろうか。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- コトバンク「ガチョウ」(日本大百科全書). https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6-3148528 (飼い方・祖先の種)
- Arctic Station "the science of faeces". https://www.arcticstation.nl/science.php?nr=519 (短い腸・フンの間隔・ついばみ)
- British Ecological Society 資料. https://www.britishecologicalsociety.org/applied-ecology-resources/document/19831446881/ (草食ガンの消化効率が低いという報告)
- Heliyon 2024 elephant grass in geese. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11053276 (盲腸の微生物・草粉の置きかえ)
- 日本野鳥の会 Strix 20巻. https://www.wbsj.org/nature/public/strix/20/strix20_15.pdf (マガンの食べ物)
- 環境省 ラムサール条約湿地 宮島沼. https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/waterfowl/miyajimanuma.html (マガンの飛来数)
- 田螺山遺跡のガン類の骨の研究. PNAS (2022). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8944903 (約7000年前のガン類・窒素同位体比)
なおした ところ
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