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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あぶは なにを たべて いるの?

アブの雌は皮膚を切って血をなめる。雄や幼虫は何を食べる?

アブの食べ物 ── 吸血する雌、蜜を吸う雄、泥の中で肉食の幼虫

分野:生きもの

夏の かわべで ちくっと さして くる あぶ。じつは、さすのは めすだけです。おすは、はなの みつを のんで います。

では、めすは どうして ちを すうのでしょう。あぶの こどもは、なにを たべて いるのでしょう。たべものが どう かわるのか、この きじで わかります。

夏の水辺や牧場で、ちくりと刺してくるアブ。ところが、人や牛の血を吸うのは雌だけで、雄は花の蜜や樹液を口にしています[3]。しかも雌は、針で吸うのではなく、皮膚を切って流れた血をなめます[2]。

同じ種類の虫なのに、なぜ雌だけが血を吸うのでしょうか。幼虫は何を食べているのでしょうか。雌と雄と幼虫で食べ物がどう違うのか、その理由まで分かります。

アブ類の多くは吸血性だが、吸血するのは雌の成虫だけで、雄は花の蜜や樹液を吸う[1][3]。幼虫は水辺や湿地の土の中で小動物を食べる肉食である[1]。アブ科では、幼虫・雄・雌で食べ物が異なる。

なぜ雌だけが血を必要とするのか、どうやって血を得るのか、そして血だけで生きているわけではないのか。資料ごとに言えることと言えないことを分けて、その理由が分かる。

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1. さすのは、おすと めす、どちら?

1. 血を吸うアブは、雌だけ

1. 吸血するのは雌だけ ── 牛の近くで人を襲う種もいる

かわや ぼくじょうの ちかくで、ちくっと いたい。それは あぶの めすです。ちを すうのは、めすだけ だと されて います[1]。

おすは さしません。はなの みつや、きの しるを すって います[3]。

にほんには、うし あぶや あか うし あぶなどが います。うし あぶは 6がつから 8がつごろに あらわれて、うしを かう ばしょの ちかくに おおいと いわれます。あか うし あぶは、ひるでも ひとや かちくを おそいます[1]。

では、めすは どうやって ひとの ひふから ちを とるのでしょう。

名古屋市の衛生害虫の解説によると、アブの仲間は大部分が吸血性で、血を吸うのは雌だけです。産卵に必要な栄養をとるためと考えられています[1]。雄は血を吸わず、花の蜜や樹液を吸います[3]。

日本にはウシアブやアカウシアブなどがいます。ウシアブは6月から8月ごろに現れ、畜舎や放牧場の近くに多く、アカウシアブは昼間にも活動して人や家畜を襲うと紹介されています[1]。

刺された、と思ったときの犯人は、雌です。では雌は、蚊のように針を刺して血を吸っているのでしょうか。

刺されたと感じたとき、その相手は雌の成虫である。名古屋市の衛生害虫の解説は、アブ類の大部分が吸血性で、吸血するのは雌のみであり、産卵のための栄養をとるためと考えられる、と述べる[1]。雄は血を吸わず、樹液や花の蜜を吸うとされる[3]。

種によって活動の場所や時間は異なる。同じ資料によれば、ウシアブは6〜8月ごろに成虫が現れて畜舎や放牧場の近くに多く、アカウシアブは日中にも活動して人や家畜を襲う[1]。牛の近くで人も襲われるのは、血を吸う雌が動物の集まる場所に来るためとみられるが、この点は資料が直接述べているわけではない。

ここで、蚊と同じ針で吸うのか、という疑問が出る。口の構造を見ると、答えは違う。

2. ちを すうと いうより、ひふを きって なめる?

2. 針で吸うのではなく、皮膚を切って、出てきた血をなめる

2. 皮膚を切る大あご ── 吸うのではなく、なめる

あぶの めすは、はりを さしません。ぎざぎざの ついた 1つい の あごで、ひふを のこぎりのように きります。ちいさな ちの くだが きれて、でてきた ちを なめます[2]。

だえきには ちを かたまらせない はたらきが あって、きずからは ちが でつづけます[2]。

みつけるときは、どうぶつの はく いきの にさんかたんそに ひきよせられ、ちかづくと たいおんを かんじると いわれます[3]。

それにしても、めすは なぜ そこまでして ちを ほしがるのでしょう。

イギリス自然史博物館の解説では、アブの雌の口は、ぎざぎざのある1対の大あごで皮膚をのこぎりのように切り、小さな血管が切れて血が流れ出すと、それをなめる形です[2]。唾液には血が固まるのを防ぐ成分があり、そのため血が止まりにくくなります[2]。

獲物を探すときは、動物の吐く息の二酸化炭素に引き寄せられ、近づくと体温を感じとるといわれます[3]。日本の辞典には、口器で皮膚を切り刺して、流れ出る血をなめると書かれています[3]。

「吸う」というより「切ってなめる」食べ方です。これほど手間のかかることを、雌はなぜするのでしょうか。

蚊が針状の口を差し込んで吸うのに対し、アブの雌は皮膚を切る。英国自然史博物館の解説によると、ぎざぎざのある1対の大あご(おおあご)が皮膚をのこぎりのように切り進み、小さな血管が切れて血が流れ出す[2]。唾液には血液凝固を妨げる成分が含まれ、血が止まりにくい[2]。傷が大きく出血も続くため、刺されたときの痛みが強く感じられるのだろうが、痛みの強さについては資料に記述がない。

獲物の見つけ方については、日本の辞典の記述がある。成虫は動物の呼気中の二酸化炭素に引き寄せられ、近づくと体温を感じ、口器で皮膚を切り刺して流れ出る血をなめる[3]。ただし、この辞典は二次資料であり、種ごとの差までは書かれていない。

こうして得た血は、何に使われるのか。

3. めすは、ちを なんのために すうの?

3. 雌が血を求める理由は、卵を育てるため

3. 血は卵の材料 ── ただし「血だけ」ではない

めすが ちを すうのは、じぶんが おなかが すいたからでは ないと かんがえられて います。たまごを つくるのに、たんぱく しつの おおい えいようが いるからです[2]。

ちには、たまごを そだてる えいようが ふくまれて います。ちだけで たまごを つくるのでは ありません。

ただし、ちを すえば すぐ ぜんぶの たまごが できる、という はなしでは ないようです。ちから えた えいようは、おもに 2かいめ いごの さんらんに つかわれる と される じてんも あります[3]。

では、おすと めすは、ふだん なにで げんきを だして いるのでしょう。

イギリス自然史博物館は、皮膚を破れる口を持つのは雌だけで、雌は受精したあと卵を育てるために、高タンパクの栄養が必要になると説明しています[2]。名古屋市の資料も、雌だけが吸血するのは産卵に必要な栄養をとるためと考えられると述べています[1]。

ただし、血が全部の卵の材料になるとは言えません。日本の辞典には、吸血で得た栄養はおもに2回目以後の産卵に使われると書かれています[3]。

血は、卵づくりの特別な栄養です。では、雌も雄も、ふだんは何を口にして動いているのでしょうか。

雌だけが血を求める理由は、卵にある。英国自然史博物館は、皮膚を破れる口器を持つのは雌だけで、受精後の卵の発達に高タンパクの栄養が要ると説明する[2]。名古屋市の資料も、産卵に必要な栄養をとるためと考えられる、という書き方にとどめている[1]。「考えられる」とされる点には注意が要る。

そのうえ、血と卵の関係は単純ではない。日本の辞典によれば、吸血から得られた栄養はおもに2回目以後の産卵に使われる[3]。雌が全部の卵を血だけでつくるとは読めない。

血が卵のための特別な栄養だとすると、日々の活動のエネルギー源は別にあるはずだ。そこで、蜜に目を向ける。

4. ふだんの ごはんは、はなの みつ?

4. 雄の食事は花の蜜。雌も蜜をなめている

4. 蜜と樹液 ── 雌雄とも糖をとる

おすは ちを すいません。はなの みつや きの しるを すって います[3]。イギリスの はくぶつかんも、おすは みつを のんで いる と せつめい して います[2]。

あぶの おとなは、たくさんの しゅるいで みつを とり、ときどき かふんも とると されます[2]。

めすも みつを なめて いる ようです。ろんぶんの ようしでは、おなかの なかに さとうが あった めすが、はんぶん ほど いたと ほうこく されて います[4]。ちだけで いきて いる わけでは なさそうです。

さて、ここまでは おとなの はなし。あぶの こどもは、どこで なにを たべるのでしょう。

雄は血を吸わず、樹液や花の蜜を吸います[3]。イギリス自然史博物館も、雄は実際には蜜を食べていると説明し、アブの成虫は多くの種で蜜と、ときに花粉をとると述べています[2]。

雌はどうでしょう。Kniepert(1980)の要旨には、腸の中に糖があるかを調べた結果、雌の53パーセント、雄の69パーセントが陽性だったと書かれています[4]。これは糖をとっていた個体の割合で、食べた量や主食の割合ではありません。それでも、雌も血だけで生きているわけではない、という手がかりになります。

さて、ここまでは成虫の話です。幼虫はどこで、何を食べているのでしょうか。

雄は血を吸わず、樹液や花の蜜を吸う[3]。英国自然史博物館も、雄は咬まず蜜を食べると述べ、成虫は多くの種で蜜と、ときに花粉をとるとする[2]。ここで言えるのは「多くの種で」までで、日本の種ごとの雄の食性は資料にない。

では雌は蜜を口にしないのか。Kniepert(1980)の要旨によれば、腸内の糖を調べる冷アントロン試験が陽性だったのは、雌7,002匹の53パーセントと雄2,436匹の69パーセントだった[4]。陽性率であり、食べた量や主食の割合を示すわけではない。それでも著者は、糖は夏を生きぬくのに重要かもしれないと述べる[4]。

この数字は、要旨で紹介された一つの調査結果として読む。血が卵のため、蜜が日々のエネルギーのためという分担は、確かな部分と推測の部分を含む。次に、成虫になる前の食べ物を見る。

5. あぶの こどもは、どこで なにを たべるの?

5. 幼虫は、水辺の土の中で小さな動物を食べる肉食

5. 幼虫の食性 ── 湿った土の中の捕食者

あぶの こどもは、うじむしのような すがたです。おがわや たんぼ、みずうみ、しめった じめんなどに すんで います[1]。

たべものは、はなの みつでは ありません。ちいさな どうぶつを つかまえて たべる、にくしょくです[1]。ミミズや かいるい、こんちゅうなどを たべると かかれた じてんも あります[3]。

どの しゅるいが なにを たべるかまでは、しりょうに ありません。

こどもは どろの なかで ほかの いきものを たべます。おとなの おすは はなの みつを のみ、めすは ちと みつを とります。こども、おす、めすで、たべものが 3とおりに ちがいます。

アブの幼虫はウジ虫のような形で、小川、水田、湖沼、湿地などにすんでいます。肉食性で、小さな動物をとらえて食べます[1]。辞典には、ミミズや貝類、昆虫などを食べると書かれています[3]。種ごとの餌までは、資料からは分かりません。

成虫の雄は花の蜜、雌は血と蜜。幼虫は泥の中の肉食。アブの仲間は、幼虫・雄・雌で3通りの食べ物をとっているのです。花や牛の近くで見かけるのは成虫で、生活のほんの一部です。

この「3通り」を、自分の手で整理してみましょう。

幼虫はウジ虫型で、小川・水田・湖沼・湿地などに生息し、肉食性で小動物を捕食する[1]。世界大百科事典の記述として、ミミズ・貝類・昆虫などを食べるとも紹介される[3]。ただし種ごとの餌は資料から読みとれず、この記述は科全体の概説である。

これまでの内容を合わせると、アブ科では、幼虫は泥の中で小動物を捕食し、成虫は雄が蜜と樹液、雌が血と蜜をとる。幼虫・雄・雌で食べ物が異なるわけである。ただし、ここで挙げた特徴が一つひとつの種すべてに当てはまるとは限らない。花や牛の近くで見かけるのは成虫である。

吸血は、この三つの食べ物のうちの一部分にすぎない。資料に当たる際は、成虫の雌の話か、幼虫の話かを分けて読むと混乱しにくい。

もっと しりたく なったら

アブの「3通りの食べ物」を、自分で書き出してみる

アブの食性を、自分で整理し直すには

おうちで

かみに「こども」「おす」「めす」と かいて、それぞれ なにを たべるか かいて みましょう。「めす」には ちと みつの りょうほうが はいります。ほんとうに ちだけ なのか、じぶんで かんがえて みます。

そとで

はなに くる むしを、とおくから 見て みましょう。あぶに にた むしも います。さわったり、おいかけたり しません。

しらべる ときは

おうちの ひとと、まちの ホームページを ひらいて、あぶの ことを さがして みましょう。

家でできること

紙に「幼虫」「雄」「雌」と書き、それぞれの食べ物を書き込んでみましょう。雌の欄は、血だけでなく蜜も書けるか、どの資料の言葉で確かめられるかを考えてみます。

外でできること

夏の水辺や花のそばで、虫を遠くから観察してみます。アブに似た虫もいるので、見分けがつかないときは近づきません。

調べるには

名古屋市の衛生害虫の解説のように、自治体のホームページにアブ類の紹介がある場合があります。読むときは、「雌だけが血を吸う」という観察と、「産卵の栄養のため」という理由の説明を、分けて印をつけてみましょう。

家でできること

幼虫・雄・雌の三つの欄をつくり、それぞれ資料のどの記述が根拠かを書き込む。雌の欄では、血だけでなく蜜も書けるかを確かめ、「確かなこと」と「推測」を色分けしてみる。

外でできること

夏の水辺や花のそばで、虫を遠くから観察する。アブに似た虫がいるので、種の見分けがつかないときは近づかない。

資料を読むなら

名古屋市の衛生害虫の解説のような日本語の自治体資料で、「雌のみ吸血」という観察と、「産卵の栄養のため」という理由の説明(「考えられる」と書かれている部分)を、線の色を変えて分けてみるとよい。どこまでが確かめられた事実かを、自分で考える練習になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

吸血の理由と口のつくりは自治体と博物館の解説、食べ物の分類は辞典、雌雄の蜜は論文の要旨による。

  1. 名古屋市「衛生害虫(アブ類)」 https://www.city.nagoya.jp/ (雌のみ吸血・幼虫の食性・日本の種)
  2. Natural History Museum (UK) "Are horsefly bites on the rise?" (2018) https://nhm.ac.uk/discover/news/2018/july/are-horsefly-bites-on-the-rise.html (口のつくり・卵のための栄養・雄は蜜)
  3. コトバンク「アブ」(日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典・世界大百科事典) https://kotobank.jp/ (雄の食べ物・獲物の探し方・幼虫の餌・2回目以後の産卵)
  4. Kniepert (1980) Oecologia 46:125-129 の要旨 https://tabanidae.myspecies.info/node/893/ (雌雄の腸内の糖)

なおした ところ

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