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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おとなに なった ガは、なにを たべて いきて いるの?

ガの成虫は何を食べているのか:花のみつ、鳥のなみだ、そして「何も食べない」口

ガの成虫は何を食べ、衣類を食べるのは誰なのか:スズメガの口吻、鳥の涙、食べない成虫から考える

分野:生きもの

よるの まどに ガが きて います。この ガは、おとなに なってから、なにを たべて いるのでしょう。じつは、はなの みつを のむ ガも、とりの なみだを のむ ガも、なにも たべない ガも います。

この メモでは、ガの おとなの たべものが、しゅるいごとに どう ちがうのか、ふくを たべるのは だれなのかが わかります。

夜の窓にとまった蛾は、成虫になってから何を食べているのでしょうか。花の蜜を吸う蛾もいれば、眠っている鳥の涙を飲む蛾も観察され、カイコガのように口が退化して何も食べない成虫もいます。

この記事では、蛾の成虫の食べ物が種類ごとにどう違うのか、衣類を食べているのは誰なのかが分かります。

蛾の成虫は何を食べるのか。蜜だけを吸うスズメガの仲間がいる一方で、ブラジルのアマゾンでは、眠る鳥の涙を吸う蛾が観察されている。さらにカイコガの成虫は、口が退化していて食べ物をとらないとされる。ひとくくりに「蛾」と呼んでも、食べ方はこれほど分かれる。

この記事では、成虫の食べ物が種によってどう異なるのかと、衣類を食べる犯人が誰なのかを見ていく。

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1. ガは おとなに なると、なにを たべるの?

1. 蛾の成虫は、何を食べるのか

1. 成虫の食べ物は「種」ごとに分かれる

こたえは、「ガに よって ちがう」です。

スズメガの なかまの おとなは、ほとんどが はなの みつだけを たべる、と いわれて います。そして、カイコガの おとなは、くちが ちいさく なって、なにも たべません。

おなじ ガでも、ごはんが こんなに ちがう のは、おもしろいですね。

答えを先に言うと、「蛾の成虫が何を食べるかは、種によってまったく違う」です。

スズメガの仲間は、成虫のほとんどが花の蜜だけを食べるとされています[3]。ヤガの仲間には、後で見るように鳥の涙を吸う例も観察されています。その反対に、カイコガの成虫は翅があっても飛べず、口も退化していて、食べ物をとらないと辞典に書かれています[1]。

では、蜜を吸う蛾の口は、実際にどれくらい長くなるのでしょうか。まずはその「口」からのぞいてみます。

結論から言えば、成虫の食べ物は蛾というグループ全体では決まらず、種ごとに大きく異なる。スズメガ類の成虫はほとんどが蜜だけを食べるとされ、口吻(ストロー状の口)の感覚毛で蜜の濃度や成分を確かめる[3]。一方、カイコガの成虫は翅をもつが飛べず、口も退化していると辞典に記されている[1]。つまり「蛾は何を食べるか」という問いには、「どの種の、どの時期か」を添えないと答えられない。

では、蜜を吸う種の口は、実際にどこまで長くなり得るのか。まず、それを見る。

2. ダーウィンは、ながい くちの ガを いいあてたの?

2. ダーウィンが花を見て「長い口の蛾がいるはずだ」と考えた話

2. 蜜が距の底にしかない花:ダーウィンの予言と口吻

スズメガの おとなは、まるめて ある ながい くちを のばして、はなの みつを すいます。そらに とまった ように とびながら、くちの さきで、みつの こさを たしかめる、と いわれて います。

イギリスの ダーウィンは、マダガスカルの ランを みました。この はなは、ほそ長い ふくろの いちばん そこにだけ、みつが あります。

ダーウィンは「この みつを すえる、すごく ながい くちの むしが いるはずだ」と かんがえました。

その むしは、いきて いる うちには みつかりませんでした。のちに、スズメガの なかまで、くちが 22センチ ほどの ガが みつかりました。ものさしの はんぶんより ながい くちです。

蜜を吸う蛾の口は、ストローのような「口吻」です。スズメガ類は花の前で空中に止まって飛びながら、口吻にある味や触覚の感覚毛で、蜜の濃さや成分を確かめるといいます[3]。好む糖の濃度は、約20〜40%だそうです。

ダーウィンはマダガスカルのランAngraecum sesquipedaleを見ました。この花は距(きょ)と呼ばれる細長い袋の底にだけ蜜があります。ダーウィンは、それを吸えるほど長い口の虫がいるはずだ、と予言しました[4]。

予言は、ダーウィンの生きているうちには確かめられませんでした。のちにスズメガの一亜種が見つかり、口吻はおよそ220mmとされています[3]。定規の約3分の2です。

ここで一つ、蛾らしい特徴が見えます。蜜を吸うスズメガは、口があるおかげで、深い花の底の蜜まで届くのです。では、もっと意外なものを口にする蛾はいるのでしょうか。

スズメガ類の成虫は、ほとんどが蜜だけを食べる。口吻の感覚毛で糖の濃度や成分を判定でき、好む糖濃度は約20〜40%と報告されている[3]。花の前で空中に静止するホバリングを使うため、口吻の先で蜜の質を確かめることになる。

この口吻の長さが、進化論の歴史に1つの逸話を残した。ダーウィンはマダガスカルのラン Angraecum sesquipedale の花を見て、蜜が長い距の底にしかないことに注目し、それを吸える極端に長い口の昆虫が存在するはずだと予言した。これは特定の種名を言い当てたのではなく、「そのような口をもつ虫がいるはずだ」という予測であった[4]。

その後、スズメガの一亜種 Xanthopan morganii praedicta が見つかり、口吻は約220mmとされる。花の距と蛾の口吻が、互いに合うよう共進化してきたと説明されている[3]。ただし蜜の位置や口吻の長さは、花ごと・蛾ごとに異なる個別の関係であり、全てのスズメガがこれほど長いわけではない。

3. ガが、ほかの どうぶつの なみだを のむの?

3. 眠る鳥の涙を吸う蛾:蜜にない栄養を探す

3. 蜜にない塩分とたんぱく質:涙を吸う蛾の観察

ブラジルの アマゾンで、おどろく ことが みつかりました。ねむって いる とりの めの そばに ガが とまり、なみだを のんで いたのです。

とりは アリドリという ちいさな とりで、ガは ヤガの なかまの ひとつ でした。

どうして なみだなのでしょう。はなの みつには、しお(塩分えんぶん)が ほとんど ない ので、なみだで おぎなって いる のでは、と かんがえられて います。

ブラジルのアマゾンでは、ヤガ科のGorgone macareaという蛾が、眠っているクロアゴアリドリという鳥の涙を吸う様子が観察されました(2018年の報告)。同じような報告は世界で3例目とされます[5]。

なぜ涙なのでしょう。花の蜜には、体に必要な塩分がほとんど含まれていません。塩分やたんぱく質を得るためかもしれない、と解説されています[5]。ただし、なぜ涙を吸うのかは分かっていません。これは観察から推定された理由にすぎません。

ここまで、成虫の食べ物は「蜜」「涙」と見てきました。では、食べ物を何もとらない成虫は、どう生きているのでしょうか。

ブラジル・アマゾンで、ヤガ科 Gorgone macarea が眠るクロアゴアリドリの涙を吸う様子が観察された(Moraes 2018, Ecology)。世界で3例目の報告とされる[5]。

この行動は、蜜という主な食べ物の弱点で説明される。蜜は糖が中心で、塩分やたんぱく質をほとんど含まない。脊椎動物の体液は、そうした成分を得られる代替の供給源になり得る、と解説されている[5]。ただし、これは観察から推測された理由であり、鳥にとって害になる可能性も含め、確定した知見ではない。

では、そもそも食べ物をとらない成虫は、必要なものをどこから得るのか。

4. なにも たべない おとなの ガは、どうして いきて いけるの?

4. 食べない成虫は、幼虫のときに蓄えた栄養で生きるのか

4. 口が退化した成虫:食事を幼虫の時期に集める

カイコガの おとなは、はねが あっても とべません。くちも ちいさく なって いて、ごはんを たべません。

では、どうやって いきるのでしょう。おとなに なる まえの 幼虫ようちゅうの とき、クワの はを たくさん たべます。その ときに ためた ものを つかって いるのでは、と かんがえられて います。

おとなは、たまごを うむ ための じかんを すごして、やがて よわって いきます。

のに すむ ガにも、おとなに なると たべない しゅるいが いると いわれて います。

カイコガの成虫は翅があっても飛べず、口も退化しているとされます[1]。食べも飲みもせず、交尾と産卵をしたあと弱って死ぬ、という解説もあります。野生の蛾にも、成虫が食べない種類がいるといわれます[2]。

では、成虫は何を使って生きているのでしょう。手がかりは幼虫です。カイコの幼虫はクワの葉を食べて育ちます。成虫になってからは食べない代わりに、幼虫の時期に蓄えた栄養を使っているのではないか、と考えられます。

つまり蛾には、「食べる時期」と「増やす時期」が分かれている種類がいる、ということです。ここまで来ると、最初の疑問がもう一つの形になります。服に穴をあけるのは、いったい誰なのでしょうか。

カイコガの成虫は、翅はあるが飛べず、口も退化している。辞典の記述によれば、成虫は食物をとらない[1]。学習教材の解説では、成虫は食べも飲みもせず、交尾・産卵のあとに衰弱して死ぬとされ、野生の蛾にも成虫が食べない種類がいるという[2]。ただしこの教材は一般向けで、種ごとの詳しい研究とは別物なので、「蛾の成虫が食べない」とは言い切れず、食べない種がいる、という程度に読むべきである。

ここから、成虫が活動に使う栄養は幼虫期に蓄えた分で賄われると考えるのが自然だが、直接確かめた資料があるわけではない。実際、カイコの幼虫はクワの葉を食べて育つ。成虫の口が退化することは、食べる機能が不要になった結果とも読める。

この分業が成り立つなら、食害の犯人を探す場合も「どの時期か」が鍵になる。そこで、衣類の穴に話を移す。

5. ふくに あなを あけるのは、ガの おとな?

5. 服に穴をあけるのは、成虫ではない

5. 衣類を食べるのは、蛾の成虫ではなく幼虫

セーターに あなが あいた とき、「ガの せいだ」と おもう ひとが います。でも、ふくを たべるのは、おとなの ガでは ありません。

イガや コイガという ガの 幼虫ようちゅうが、うもうや けのような、どうぶつの 繊維せんいを たべます。繊維せんいの かけらで、つつのような すを つくって、その なかに かくれます。

しかも、ふくを たべる ものの なかには、ガでは ない むしも います。カツオブシムシという こうちゅうの 幼虫ようちゅうです。

衣類の食害をするのは、イガ・コイガなどの幼虫です。毛織物などの動物性の繊維を食べ、繊維の小片をつづり合わせて筒状の巣を作って、中に潜んでいます[6]。

成虫の蛾は、衣類をかじって食べるわけではありません。ただし、毛織物にはカツオブシムシ類(甲虫)も被害を与えます。その幼虫は毛織物や毛皮、鰹節などを食べ、成虫は野外で花粉や蜜を食べます[7]。

面白いのは、蛾の幼虫の食べ物の広さです。ヒロズコガ科の多くの種の幼虫は、屋外で地衣類や枯れ葉、菌類を食べて育ち、屋内で毛織物を食べるのはその一部です[6]。服は、蛾の幼虫の「食べ物の一つ」にすぎません。

衣類を食害するのはイガ・コイガ(ヒロズコガ科)の幼虫で、動物質の繊維を食べ、繊維の小片をつづり合わせた筒状の巣の中に潜む[6]。成虫が服を食べるのではない点が、一般の理解とずれやすい。

さらに、毛織物にはカツオブシムシ類(甲虫)も被害を与える。その幼虫は毛織物・毛皮・生糸・鰹節などを食べ、成虫は野外で花粉や花の蜜を食べる[7]。つまり「服を食べる虫=蛾」という見方は、必ずしも正確ではない。

ヒロズコガ科の多くの種の幼虫は、屋外で地衣類・枯葉・菌類を食べて育ち、屋内で毛織物を食べるのは一部にすぎない[6]。蛾の食性は、成虫の蜜や涙だけでなく、幼虫の時期の多様さまで含めて考えるものだといえる。

6. しまって ある ふくを だすとき、さがして みよう

6. 毛織物を取り出すとき、探してみるもの

6. 取り出した毛織物で、確かめられること

おうちの ひとと いっしょに、しまって ある ウールの ふくを だす とき、よく みて みましょう。

つつのような ちいさい すや、けの かけらが ついて いないか、さがします。ふくを たべるのは 幼虫ようちゅうです。もし みつけたら、おうちの ひとに おしえて ください。

よるに ガを みた ときは、「この ガは、なにを たべるのかな」と かんがえて みてください。

家族と一緒に、しまってあるウールのセーターなどを取り出すとき、筒状の小さな巣や、繊維の小片がついていないか探してみましょう。見つけたら、大人に知らせてください。

夜に蛾を見たときは、「この蛾の成虫は、蜜を吸うのか、食べないのか」と考えてみてください。成虫の食べ物は、種によってまったく違います。名前を調べると、その答えが分かることがあります。

次の問いは、「幼虫のときの食べ物と、成虫のときの食べ物は、どうつながっているのか」です。

毛織物を取り出すときに、筒状の巣や繊維の小片が付いていないか見てみるとよい。見つけた場合、犯人がイガ・コイガなのかカツオブシムシ類なのかを、自治体の保健所などの資料と見比べて調べられる[7]。

残る疑問は、成虫の食性が幼虫期の食べ物とどう関わるのか、という点である。成虫が食べない種では、幼虫期に蓄えた分がその後の産卵にどう関わるのか。これを知る手がかりとして、上に挙げた論文[3]の本文や、昆虫の食性を扱う解説がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

成虫の食べ物の記述は辞典・論文・報道・自治体の資料から、種ごとの違いが分かる範囲で引用しました。

  1. デジタル大辞泉「蚕蛾」(コトバンク)https://kotobank.jp/word/%E8%9A%95%E8%9B%BE-457248 (カイコガ成虫の口の退化)
  2. 学習教材「かいこ」No.7(学研)https://gakuto.co.jp/docs/download/pdf/kaiko-no7.pdf (成虫が食べない解説)
  3. Stöckl & Kelber 2019, J Comp Physiol A https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6579779 (スズメガの吸蜜と口吻)
  4. American Museum of Natural History「Darwin and the orchid」https://tumblr.amnh.org/post/190490694949/charles-darwin-first-saw-the-angraecum/amp (ダーウィンの予言)
  5. National Geographic「Moths drink birds' tears」https://www.nationalgeographic.com/animals/article/moths-drink-birds-tears-amazon-animals (鳥の涙を吸う蛾の観察)
  6. 名古屋市「イガ・コイガ」https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/eisei/1015269/1034848/1015298/1034489/1034407/1015362.html (衣類を食べる幼虫と巣)
  7. 札幌市保健所「カツオブシムシ」https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f3seikatu/f80mushi/2_juukyo/katuobusimusi.html (カツオブシムシの食べ物)

なおした ところ

更新履歴

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