1. あたまの「みみ」は、ほんとうの みみなの?
1. 頭の「耳」は飾り羽で、トラフズクのごはんの中心はネズミ
1. 羽角は耳ではない ── トラフズクの獲物はまずネズミ
みみずくの なまえには「みみ」が はいって います。たしかに あたまの うえに、みみの ような はねが たって います。
でも、これは かざりの はねで、おとを きく はたらきは ありません。ほんとうの みみは、めの よこの あたりに あります[1]。
では ごはんは なんでしょう。トラフズクは、おもに ねずみを つかまえます。かえるや ことりも たべる そうです[1]。
ねずみを まるごと たべたら、ほねは どこへ いくのでしょう。
2. ほねは どこへ いくの? はいて しまうの?
2. 骨ごと丸のみして、消えない分は口から吐き出す
2. 砂嚢で選り分けられた骨と毛は、塊になって口から出る
ふくろうの なかまは、ちいさな えものを まるのみに します[5]。ひとの ように、かんで ほねを よけたり しません。
おなかの なかには、「砂嚢」という ところが あります。ここで、とけない ほねや けが より わけられます。
とけない ものは、たまごのような まるい かたまりに まとまります。しばらくして、くちから ぽんと はきだします。これを「ペリット」と いいます[5]。
ごはんの のこりが、かたまりに なって でて くるのです。
ミミズクを含むフクロウの仲間は、小さな獲物を丸のみにします。人のように、骨を外して食べることはしません。
飲みこまれた獲物は、胃の一部である砂嚢に入ります。アメリカのオーデュボン協会の解説では、砂嚢が選り分けのような働きをして、消化できない骨・歯・毛を楕円形の塊にまとめます。塊は数時間後ごろ、口から吐き出されます[5]。この塊がペリットです。
ペリットは、消化されなかった部分を口から出したものです。この塊に、食べたものの手がかりが入っています。
ミミズク類が獲物を丸のみすると、その後はどうなるのか。オーデュボン協会の解説によれば、獲物は砂嚢(胃の一部)に入り、そこで消化できない骨・歯・毛が選り分けられて楕円形の塊に固められる。この塊が数時間後ごろ口から吐き出される。これがペリットである[5]。
ここで大事なのは、ペリットが排せつ物ではなく、消化の途中で「残った部分」を口から出したものだという点だ。だから中身は、食べられなかった部分、つまり骨や毛に偏る。この偏りが、次の章で述べるように、食べ物を調べる材料になる。
3. はきだした かたまりから、なにを たべたか わかるの?
3. 吐き出された塊をほぐすと、食事の記録が出てくる
3. ペリット分析 ── 丸のみだから、骨が原形のまま読める
わしや たかは ちがいます。えものの にくを ちぎって たべて、ほねは のみこみません[6]。
ふくろうの なかまは まるのみ なので、ペリットの なかの ほねが、かたちを のこして います。
ペリットを ぬるま ゆに つけて、そっと ほぐします。ほねを ルーペで みると、あたまの ほねや あごの ほねから、どんな いきものを たべたか しらべられる ことが あります[6]。
たべるところを みて いなくても、のこった ほねが「きょうの ごはん」を おしえて くれるのです。
ワシやタカは、獲物の肉をちぎって食べ、骨は飲みこみません。フクロウの仲間は小型の脊椎動物を丸のみにするので、その骨がペリットに形を保ったまま残ります。スタンフォード大学の鳥の解説では、ペリットをぬるま湯に浸し、ていねいにほぐして拡大して見ると、骨から獲物の脊椎動物が分かることが多いと紹介されています[6]。
頭の骨やあごの骨は、動物ごとに形が違います。そのため、ペリットの中の骨は「何を食べたか」を残した記録になります。
ここで、ひとつ注意があります。ペリットに残るのは骨や毛など消化されにくい部分です。そのため、骨の少ない獲物は塊に残りにくいかもしれず、見つかった骨の数がそのまま食べ物の割合になるとは限らないと考えられます。
そのうえで、この方法のよい点は、鳥を捕まえたり、食事を見張ったりしなくても、落ちている塊から調べられることです。
食べるところを観察しにくい鳥の食性を、研究者はどう調べるのか。スタンフォード大学の鳥類の解説は、ペリットをぬるま湯に浸し、慎重に解剖して拡大して見ることで、骨から脊椎動物の獲物を同定できることが多いとしている[6]。
この方法が成り立つ理由は、消化の仕方の違いにある。ワシやタカは獲物の肉をちぎって食べ、骨を飲みこまない。フクロウ類は丸のみするので、頭骨やあごの骨がペリットに原形をとどめ、そこから種類を絞れる[6]。
ただし、限界もある。ペリットに残るのは骨・歯・毛のように消化されにくい部分[5]なので、骨の少ない獲物は記録に残りにくい可能性がある。だから、ペリットから出た種類の数を、そのまま食事の割合と読むことは避けたい。
では、この方法で調べると、ミミズクの食べ物は、どこでも同じだったのか。
4. おなじ なかまでも、たべものは ちがうの?
4. 体の大きさも、場所もちがうと、獲物も変わる
4. ワシミミズクの食性 ── 森と耕作地で変わる獲物
おおきな みみずくに、ワシミミズクが います。ぜんちょうは およそ 67センチ。つばさを ひろげると 1メートル 24センチ ほどに なります[3]。
よるに かりを して、ちいさな どうぶつや とり、むし、トカゲの なかままで、はばひろく たべます[3]。
ギリシャの きたひがしでは、ワシミミズクの たべものを しらべた けんきゅうが あります。およそ 59しゅるいを たべて いました[4]。
もりの ある ところでは とりや むしが おおく、はたけの ある ところでは ちいさな ほにゅうるいが おおかった、と ほうこくされて います[4]。ばしょが かわると、ごはんも かわるのです。
ミミズクの中でも大きなワシミミズクは、全長が約67cm、翼を広げると約124cmになります。秋田市の大森山動物園の解説では、夜に狩りをして、小型・中型の哺乳類や鳥、昆虫、爬虫類まで幅広く食べるとされています[3]。
では、同じ種でも場所によって食べ物は変わるのでしょうか。ギリシャ北東部で行われた調査では、ユーラシアのワシミミズクは約59種の獲物を食べていました。個体数でみると、小型哺乳類が48.9%、鳥類が44.1%です[4]。2つを足すと93.0%で、残りの約7%がそれ以外になります。
生息環境ごとに見ると、森林では鳥と昆虫が中心で、耕作地では小型哺乳類が中心でした[4]。これは、この調査地での値で、ワシミミズク全体の平均ではありません。
同じ種でも、森では鳥と虫、畑の近くではネズミの仲間、というように、そこで手に入りやすい獲物を食べていることがうかがえます。
主食はネズミ、と言い切ってよいのか。大型のワシミミズクは、秋田市の動物園の解説で、体長約67cm、翼開長約124cmの大型種とされ、小・中型の哺乳類と鳥類、昆虫や爬虫類まで幅広く食べる[3]。
この幅の広さを数字で見たのが、ギリシャ北東部の調査である。ユーラシアのワシミミズクは約59種を食べており、個体数では小型哺乳類が48.9%、鳥類が44.1%だった。この2つで93.0%になり、鳥も哺乳類とほぼ並ぶ主役である[4]。
さらに、環境ごとに分けると傾向が変わる。森林では鳥と昆虫が中心で、耕作地では小型哺乳類が中心になる[4]。つまり、全体では半々に見える数字も、環境ごとに見ると、片方に寄っていたことになる。
この数値は、あくまで一つの調査地の値であり、ワシミミズク全体の平均ではない。前の章で述べたように、ペリットの中身の割合は骨が残りやすい獲物に偏る可能性があるので、数字は「その調査で数えた個体数の割合」として読むのが安全である。
種や場所で獲物が変わるなら、獲物をたくさん捕れた日、ミミズクはどうしているのか。
5. コミミズクは、とった えものを とっておくの?
5. コミミズクは、獲物が多い日には畦や草むらに取っておく
5. コミミズクの貯食 ── 獲物を多く捕れたときの行動
コミミズクも、おもに ねずみを たべます。ふゆに わたって くる「冬鳥」で、10がつごろ、へいやに やって きます[2]。
えものが たくさん とれた ときは、たんぼの あぜの くぼみや、くさむらに しまって おく そうです[2]。
ひとが おやつを とっておく ように、えものを とっておく ことが あるのです。
6. たべた あとの ほねを ならべて みよう
6. 食べたあとの骨を並べて、「骨が残る」を体験する
6. 食べ物の跡を読む ── 身近な骨と、一次資料への道
おうちで とりの てばさきや さかなを たべた ら、ほねを ならべて みましょう。おとなと いっしょに、よく あらって、ひとの て で さわったら、せっけんで てを あらいます。
ひとは、にくを はずして たべるので、ほねが のこります。みみずくは まるのみ なので、ほねは かたまりの なかに のこります。ほねの かたちを みくらべると、どんな ほねか、すこし わかります。
どうぶつえんや はくぶつかんで みみずくを みたら、どんな ばしょに すんで いるかも みて みましょう。その ばしょで、なにを たべて いるのかも、かんがえる てがかりに なります。
食べ終わった鶏の手羽先や魚の骨を、洗ってから並べてみましょう。魚の骨は細いので、洗うときや触るときは大人と一緒に、刺さらないように気をつけてください。触ったあとは手を石けんで洗います。
人は肉を外して食べるので骨が残り、ミミズクは丸のみにするので骨が塊の中に残ります。同じ「骨が残る」でも、残り方がちがうのは面白いところです。骨の形をスケッチして、どの部分の骨か考えてみましょう。ペリットの中では、頭の骨やあごの骨が手がかりになります。
動物園や博物館でワシミミズクを見かけたら、「この子の仲間は、森と畑で何を食べ分けているのだろう」と考えてみてください。秋田市の大森山動物園[3]のように、ワシミミズクの解説を公開している施設もあります。新潟県のページ[1][2]は、日本語でトラフズクとコミミズクを短く読めます。
この記事で読んだ数字の多くは、一つの地域・一つの調査の値だ。ミミズク類の食性を知るには、種ごと、場所ごとの調査を比べる必要がある。ギリシャ北東部の調査[4]は英語の論文で、日本の鳥の食性とは別の条件で得られた数字であることに注意したい。
身近なところで試すなら、食べ終えた手羽先や魚の骨を洗って並べ、骨の形を見るとよい。魚の骨が刺さらないよう気をつけ、触ったあとは手を洗う。ペリットの骨が「獲物の記録」になるのは、骨の形が動物ごとに違い、丸のみのため骨が原形を保つからだ[6]。
日本語で読める資料としては、新潟県のトラフズク[1]・コミミズク[2]の解説、秋田市大森山動物園のワシミミズクの解説[3]がある。ペリットの形成と分析については、オーデュボン協会[5]とスタンフォード大学の解説[6]が原典に近い。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:県や動物園の解説、学会誌の論文、鳥類の保護団体と大学の解説を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 新潟県「トラフズク」。https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908744749.html (羽角が飾り羽であること、主な獲物について)
- 新潟県「コミミズク」。https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908744835.html (主な食べ物、獲物の保存、渡来の時期について)
- 秋田市大森山動物園「ワシミミズク」。https://www.city.akita.lg.jp/zoo/information/1003682/1005303/1003882.html (体の大きさと食べ物の幅について)
- Avocetta 17「Diet and nest site characteristics of Eagle Owl breeding in two different habitats in north-eastern Greece」。https://avocetta.org/articles/vol-17-1-bbk-diet-and-nest-site-characteristics-of-eagle-owl-ibubo-buboi-breeding-in-two-different-habitatsin-north-eastern-greece (ギリシャ北東部の調査での獲物の割合と環境による違い。英語の論文)
- Audubon「What Is an Owl Pellet?」。https://audubon.org/news/what-owl-pellet (丸のみと砂嚢、ペリットができる仕組みについて。英語の解説)
- Stanford Birds「Owl Pellets」。https://web.stanford.edu/group/stanfordbirds/text/essays/Pellets.html (ペリットから獲物を調べる方法と、ワシ・タカとの違いについて。英語の解説)
なおした ところ
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