1. ラクダは なんでも 食べるの?
1. 「何でも食べる」と言われるラクダの食事は、どこまで広いのか
1. 「何でも食べる」は正確か ── ラクダの食事の幅
ラクダは「なんでも 食べる」と いわれる ことが あります。でも 本当は、「食べる 物の はばが 広い」と いう 意味です。
ヒトコブラクダは、とげの ある 木や、しょっぱい 土地に はえる 草、においの 強い 草も 食べると いわれます。ほかの 動物が ふつう よける 草です[1]。
サンディエゴ動物園は、魚を 食べた ことも ある、と しょうかいして います[2]。ふつうの ごはんでは なく、そういう ことも ある、と いう ことです。
それでも、とげが 口に ささらないのは ふしぎです。答えの ひとつは、くちびるに あります。
ラクダは「何でも食べる」と言われることがありますが、正確には「食べるものの幅が広い」ということです。ヒトコブラクダは、とげのある低木、塩分の多い土地に育つ植物、香りの強い植物など、ほかの家畜がふつう避ける草木も食べるとされています[1]。
サンディエゴ動物園の解説には「魚まで食べる」という紹介もあります[2]。ただし、魚はふつうの食事ではありません。食べた例もある、という程度に受けとるのが安全です。
それにしても、とげのある植物を、ラクダはどうやって口に入れるのでしょうか。最初の答えは、顔の先にあります。
ラクダは「何でも食べる」と言われるが、この言い方は正確ではない。資料が述べているのは、食べる植物の幅が広い、ということである。ヒトコブラクダは、とげのある低木、塩生植物(塩分の多い土地に育つ植物)、香りの強い植物など、ほかの家畜が通常避ける植物まで食べるとされる[1]。この記述は、別の研究者の報告を引用した総説に出てくるもので、個々の植物ごとの食べる量までは示していない。
サンディエゴ動物園の解説には「魚まで食べる」という紹介もある[2]。しかし、これを常食と読むのは行きすぎで、食べた例がある、という程度にとどめるのがよい。
幅の広さは、口に入れられる範囲の広さでもある。では、とげや塩分のある植物を、ラクダはどうやって口に入れるのか。最初の答えは、唇にある。
2. くちびるは どんな ふうに 動くの?
2. とげをちぎる、二つに割れた唇
2. 唇の構造が、食べられる植物の範囲を広げる
ラクダの くちびるは、じょうぶで、しなやかです。とげの ある 草も、しょっぱい 草も、ちぎって 食べられます[2]。
上の くちびるは、まん中で 二つに 分かれて います。右と 左が、べつべつに 動きます[2]。
右手と 左手で、べつべつに 小さな 物を つまむ ところを 思いうかべて ください。そんな ふうに 動くので、地面の 近くの みじかい 草も 食べやすいのです。
ただし 本当は、手ほど 自由に 動くわけでは ありません。では ラクダは、草原で 草ばかり 食べて いるのでしょうか。
ラクダの唇は、丈夫なのにしなやかで、とげのある植物や塩辛い植物もちぎって食べられるそうです[2]。
もうひとつの特徴は、上唇が二つに割れていることです。左右の半分が、それぞれ別々に動きます[2]。右手と左手で別々のものをつまむところを想像してみてください。左右が独立して動けば、地面すれすれに生えた短い草も、口に入れやすくなります。
ただし、口の中のしくみまで含めて、とげから身を守る理由がすべて分かったわけではありません。唇は答えの一部、と考えておくのがよさそうです。
ところで、唇でつまんでいるのは、そもそも草なのでしょうか。
動物園の解説によれば、ラクダの唇は丈夫でありながらしなやかで、とげのある植物や塩辛い植物もちぎり取って食べられる。さらに、上唇は二つに割れ、左右の半分がそれぞれ独立して動く[2]。左右が別々に動けば、片側で植物をおさえ、もう片側でちぎる、といった使い分けもできそうに思えるが、資料にそこまでは書かれていない。確かなのは、地面近くの短い草も食べやすい、という点までである。
ここから、口に入れる段階の問題は、唇の形でかなり説明できると分かる。ただし、口の中の突起がとげから口を守るという説明も見かけるが、一次資料では確認していないので、ここでは扱わない。唇は答えの一部と考えておくのが妥当である。
では、唇でちぎっているのは、どんな植物なのか。草原の草だけではなさそうである。
3. ラクダは 草と 葉っぱの どちらを 食べるの?
3. ラクダは草だけでなく、木の葉もつまんで食べる
3. 草だけでなく木の葉もつまむ「ブラウザー」── 中央ソマリアの例
ヒトコブラクダは、草だけでなく、木や 小さな 木の 葉も つまんで 食べる 動物と されます。こういう 動物を「ブラウザー」と いいます[1]。
中央ソマリアの 調べでは、47しゅるいの 植物が 食事の ほとんどを しめました。雨が 少ない 時期は 100の うち 94、雨が 多い 時期は 90 です[1]。いろいろな 木の 葉を、少しずつ 食べて いるのです。
雨が 少ない 時期は、葉を つまむ 時間が 長く なりました。これは ひとつの 場所での 話です。ほかの 場所でも 同じとは かぎりません。
でも、葉や 小さな 木は、えいようが 少ないと されます。それで ラクダは、おなかが へらないのでしょうか。
ヒトコブラクダは、低木や木の葉もつまんで食べる「ブラウザー」(葉を食べる動物)とされています[1]。
中央ソマリアで調べた報告では、47種類の飼料植物が、食事の94%(雨が少ない時期)と90%(雨の多い時期)を占めていました[1]。順番を取りちがえやすいのですが、割合が高いのは雨が少ない時期のほうです。つまり、雨が少ない時期ほど、決まった顔ぶれの植物に絞って食べていたことになります。そのうえ、この時期は葉をつまむ時間が長くなったそうです。
これは1つの地域の例なので、すべてのラクダに当てはまるとは言えません。それでも、「広い」食事が、実は数十種類の植物を使い分けた食事だったことは、想像する手がかりになります。
ただ、低木や葉は、栄養が豊富とはかぎりません。栄養の少ないものを食べて、どうやって体を保つのでしょうか。
ヒトコブラクダは、低木や樹木の葉もつまんで食べる「ブラウザー」とされる[1]。先の「幅の広さ」を数字で見ると、どうなるか。総説が引くエルミらの報告(1989年)では、中央ソマリアの47種の飼料植物が、乾季の食事の94%、雨季の90%を占めていた[1]。乾季のほうが割合は高く、残りの「その他」は乾季で6%、雨季で10%になる(引用された割合から単純に引いた値で、論文原文の表を見たものではない)。しかも乾季には、葉をつまむ時間が長くなったという。
注意したいのは、これが1地域の例だという点である。この数字は、「ラクダが47種類しか食べない」ことも、「どこでも同じ割合になる」ことも意味しない。幅広い食事とは、数十種類の植物を季節や場所に応じて使い分ける食事、と読むのが穏当である。
ただし、低木や木の葉は、栄養のよい飼料とはかぎらない。栄養の乏しいものを主に食べながら、ラクダはどうやって体を保つのか。ここで消化の話に移る。
4. 栄養の 少ない 草を、どう 食べるの?
4. 食べたものを口にもどして、かみ直す
4. 反芻と胃の部屋 ── 食べ物をかみ直すラクダの消化
ラクダは、一度 のみこんだ 食べ物を 口に もどして、もう一度 かみます。これを「はんすう」と いいます[3]。
ゆっくり 時間を かけて、食べ物を こまかく して いくのです。
ラクダの おなかの 中の 部屋は、ふつう 3つと されます。牛は 4つです。数え方は 本に よって 分かれます[3]。
食べ物が 少ない 日が つづいたら、ラクダは どうするのでしょうか。
ラクダは、一度のみこんだ食べ物を口にもどし、かみ直す「反芻」をします。食べ物を時間をかけて細かくしていく食べ方です[3]。
反芻をする動物としては、ウシがよく知られています。ウシの胃は4つの部屋に分かれますが、ラクダの胃は3つの部屋とされ、ウシの第3胃と第4胃にあたる部分の区別があいまいだと言われます[3]。ただし部屋の数え方は資料によって分かれるので、「ふつう3室とされる」と覚えておくのがよいでしょう。
とげや塩辛さを口でしのぎ、食べ物を時間をかけてかみ直す。ここまでは、食べ物がある日の話です。食べ物が何日も見つからないときは、どうするのでしょうか。
ラクダには、消化の側にも特徴がある。ラクダは反芻、つまり一度飲みこんだ食べ物を口に戻して噛み直す行動をとる。食べ物を時間をかけて細かくしていく食べ方である[3]。
胃の構造にも特徴がある。ウシの胃は4室だが、ラクダは3室とされ、ウシの第3胃と第4胃の区別があいまいだという[3]。ただし室の数え方は資料により割れるため、「ふつう3室とされる」までが言える範囲である。この記述は、フタコブラクダの項目にあるものを、ラクダ類一般の特徴として読んでいる点にも注意が要る。
口で食べ物を集め、反芻でかみ直す。この流れは、食べ物が見つかる日に限った話である。見つからない日が続くとき、ラクダは体の何を頼りにするのか。
5. 食べ物が ない 日は どうするの?
5. 食べ物が見つからない日を支えるこぶ
5. こぶの脂肪は、食事が途切れたときの貯金になる
ラクダの こぶの 中身は、水では なく、あぶらです。食べ物が とれない ときの エネルギーに なります[2]。
食べ物が 少ないと、こぶの あぶらが つかわれて、こぶが たれる ことが あります[2]。
こぶの くわしい はなしは、ラクダの こぶの 記事に あります。
でも、食べ物の ほかに、もうひとつ 大事な ものが あります。水です。
ラクダのこぶの中身は、水ではなく脂肪です。食べ物がとれないときの、エネルギー源になります[2]。
とげの草を食べ、反芻でかみ直しても、食べ物が見つからない日はあります。そのときのために、体に貯金のように脂肪を持ち歩いている、と考えると分かりやすいでしょう。反対に、食べ物が少ない日が続くと、こぶの脂肪が使われて、こぶが垂れることがあるそうです[2]。
こぶの中身が水ではない理由や、体温・汗とのかかわりは、ラクダのこぶの記事で詳しく書いています。
食べ物の次に困るのは、水です。ラクダは水に出会えたとき、どうするのでしょうか。
食べ物が途切れる日の備えが、こぶである。中身は水ではなく脂肪で、食べ物がとれないときのエネルギー源になる[2]。ここまでの食べ方を振り返ると、唇で硬い植物をちぎり、反芻で食べ物をかみ直し、それでも足りない日は蓄えた脂肪でしのぐ、という重ね方になる。
脂肪が使われる様子は、こぶの形にも表れる。食べ物が乏しいとき、こぶの脂肪が使われて、こぶが垂れることがあるという[2]。こぶの形は、その動物の食事の状況を映すことがある、と読める。
こぶの中身と、水・体温・汗の関係は、別の記事「ラクダのこぶの記事」で扱っているので、ここでは触れない。食べ物の次に問題になるのは、水の入手である。水場が少ない土地で、ラクダは水をどう飲むのか。
6. 水を 見つけたら、どれくらい 飲むの?
6. 水に出会えたときの飲みっぷりと、塩水を飲む野生種
6. 水の飲み方と、野生フタコブラクダの塩水
ラクダは、水に 出会うと、みじかい 時間で たくさん 飲みます。動物園の 話では、10分で 100リットルです[5]。2リットルの ペットボトルなら、50本ぶん。1分に すると 5本です。
ただし、数字は 本に よって ちがいます。一度に 多いときは 145リットルくらい、と いう 話も あります[2]。
野生の フタコブラクダは、海の 水より しょっぱい 水を 飲む ことが あると されます[4]。でも どうして 飲めるのかは、研究でも まだ はっきり 分かって いません。
ラクダの 食べ方は、とげや しおけを のりこえる ための、いくつもの くふうの つみかさねでした。
ラクダは水に出会うと、短い時間でたくさん飲みます。仙台市八木山動物公園は「10分間で100リットル」と紹介しています[5]。これを計算すると、1分あたり10リットル。2リットルのペットボトルなら、1分に5本、10分で50本ぶんです。一方で、一度に最大約145リットルとする資料もあり[2]、飲む量は条件や資料によって数字が違います。どちらかに決めつけず、「100リットル前後を一気に飲めることがある」と受けとるのがよいでしょう。
もうひとつ、野生のフタコブラクダには、海水より塩分の濃い水を飲むことがある、とされる点があります。家畜のフタコブラクダは、そこまでの塩分には耐えられません[4]。野生の個体が、塩をどうやって吸収し、外に出しているのかは、これまでの研究でも決着していません[4]。
唇でとげをちぎり、反芻でかみ直し、こぶの脂肪で食べ物のない日をしのぎ、水があれば一気に飲む。ラクダの食事は、食べ物が少ない土地を生きるための工夫が、いくつも重なってできていました。
水の飲み方も、食べ物の少ない土地での暮らしに合っている。ラクダは水に出会うと、短時間に大量に飲む。仙台市八木山動物公園は10分で100リットルと紹介する[5]。これは1分あたり10リットル、2リットルのペットボトルで1分に5本、10分で50本にあたる。一方、サンディエゴ動物園の側には、一度に最大約145リットルとする説明があり[2]、2リットルのボトルなら約72本分である。同じ「大量に飲む」でも、資料ごとに条件や数え方が異なるため、数字をどちらか1つに決めずに、100リットル前後を数分で飲めることがある、と受けとるのが適切である。
水の話には、まだ決着していない部分も残る。野生のフタコブラクダは、海水より塩分の濃い水を飲むことがあるとされる。家畜のフタコブラクダは、そこまでの塩分には耐えられない[4]。野生の個体が塩をどのように吸収し、排出しているのかは、これまでの研究でも決着していない[4]。
ここまでをまとめると、とげや塩分のある植物は唇でちぎり、反芻でかみ直し、こぶの脂肪で食べ物のない日をしのぎ、水があれば一気に飲む、という組み合わせになる。ただし、これらの部品が互いにどう影響しあっているかを示した資料は、今回の材料には含まれていない。組み合わせとして読むのは、あくまで整理のための見方である。
2リットルの ペットボトルと、動物園の くちびる
2リットルのペットボトルと、動物園で見る唇
数字を自分の手でたしかめる、原典のありか
ためして みよう:2リットルの ペットボトルを 1本 持って、「この 50本ぶんが、10分で 飲む 水の りょうだって」と 言って みましょう。台所に 何本 ならべたら 足りるか、考えるだけでも 大きさが 分かります。
動物園で ラクダを 見られたら、食べる ところを 見て みましょう。くちびるが 左右 べつべつに 動くか、見て みてください。さわったり、決まりに ない えさを あげたりは しません。
今日できること:2リットルのペットボトルを1本持って、「ペットボトル50本ぶんが、10分で飲む水の量」と考えてみましょう。台所に何本並べたら足りるか、想像するだけでも量が実感できます。
出かけてできること:動物園でラクダを見られたら、食べているところを見てみましょう。唇は本当に左右が別々に動くか、こぶの張り具合はどうか。決められた場所から見て、えさは動物園の決まりに従ってください。
この記事の数字は、資料によって、飲む量の数字がちがっていました。「資料によって数字が違う」と気づいたら、それが調べ方の入り口です。
この記事で使った数字は、2リットルのボトルに置きかえると、自分で検算できる。10分で100リットルは50本、1分で5本である。145リットルなら約72本になる。台所や冷蔵庫の中で、実際に何本あれば足りるかを数えてみるとよい。
原典は、英語の総説[1](ソマリアの47種の例を引用)と、サンディエゴ動物園の解説[2]が入り口になる。日本語では、仙台市八木山動物公園の解説[5]が読みやすい。野生フタコブラクダの塩水の話は[4]の記述で、ラクダ類一般ではなくフタコブラクダの話として読む。研究が決着していない点まで読める、研究が決着していない点まで読める。
動物園でラクダを見られるなら、唇が左右別々に動くか、こぶの張りはどうかを観察の入り口にするとよい。決められた場所から見て、えさやりは園の決まりに従うこと。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:研究の総説、動物園の解説、日本語版Wikipedia、野生ラクダの保護団体の資料を突き合わせて使いました。何に使ったかは、各項目の最後に書いています。
- Lakhdari et al. (2015) Livestock Research for Rural Development 27(10)。https://lrrd.cipav.org.co/lrrd27/10/lakh27205.html (食べる植物の幅、ブラウザーであること、中央ソマリアの例について)
- San Diego Zoo Animals「Camel」。https://animals.sandiegozoo.org/animals/camel (唇、魚を食べる例、こぶの脂肪、飲水量について)
- Wikipedia日本語版「フタコブラクダ」。https://ja.wikipedia.org/wiki/フタコブラクダ (反芻、胃の部屋、飼育下のこぶについて)
- Wild Camel Protection Foundation「Camelus ferus: scientific data」。https://www.wildcamels.com/camelus-ferus/scientific-data (野生フタコブラクダの塩水について)
- 仙台市八木山動物公園のブログ記事。https://www.city.sendai.jp/zoo/sns/blog/20260911_hydration.html (10分で100リットルという飲水量について)
なおした ところ
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