1. なぜ 1しゅるいの 糸では ないの?
1. 1足の中で、糸ごとに役目がちがう
1. 1足に複数の繊維が混ざる理由 ── 糸ごとの役目分担
くつしたの タグには、たとえば「ポリエステル 44%、ナイロン 32%、綿 22%、ポリウレタン 2%」のように、いくつも ならぶ ことが あります[8]。たすと ちょうど 100% です。
こたえは、糸ごとに とくいな ことが ちがうからです。くつしたは サッカーの チームのように、やくわりを わけて います。足の うらや かかとの ほきょうには ナイロンなどの じょうぶな 糸、口の ゴムの ところには ポリウレタンの 糸を つかう れいが あります[7]。
ただし 本当は、どの 糸が どこに はいるかは くつしたに よって ちがいます。じぶんの くつしたは どうなのか、あとで しらべて みましょう。
靴下のタグには、たとえば「ポリエステル44%・ナイロン32%・綿22%・ポリウレタン2%」という表示例があります[8]。足すと100%で、1足に4種類の繊維が使われていることが分かります。1940年にはナイロンの約90%がストッキングに使われたほど、糸の役目は靴下の歴史ともつながっています。
1種類にしない理由は、糸ごとに得意なことがちがうからです。たとえば、足の裏・かかと・つま先の補強にはナイロンなどの丈夫な糸、口ゴムの部分にはポリウレタンの糸を使う例があると、NITE(製品評価技術基盤機構)の資料の要旨にあります[7]。靴下は、役目を分けた糸のチームでできている、と見ることができます。
ただし、どの部分にどの糸を使うかは靴下ごとにちがいます。では、それぞれの糸はどんな性質を持っているのでしょうか。まず、肌に近い綿と羊毛から見ます。
消費者庁の規程では、靴下の表示事項は「繊維の組成」だけで、すべての繊維の名称に混用率(その繊維の質量が全体に占める割合)を百分率で添えて書く[1]。市販品の表示例には「ポリエステル44%・ナイロン32%・綿22%・ポリウレタン2%」があり、足すと100%になる[8]。
1足に4種類も混ぜるのは、繊維ごとに得意な性質が異なり、1種類では足りないからだ。NITEの資料の要旨には、足裏・かかと・つま先の補強にナイロンなどの糸、口ゴム部にポリウレタンの糸ゴムを使う例があり、こうした特定の部分の効用を高める糸の合計が全体の5%を超えると表示が必要になる、とある[7]。ただし、この点は資料の要旨に基づくので、断定せず「例」として読むのがよい。
つまりタグの数字は、役目の分担表を、質量の割合に直したものと読める。では、肌に近い部分を受け持つ綿や羊毛は、どんな糸なのか。
2. 綿と 毛は、どんな 糸なの?
2. 綿の肌ざわりと、羊毛のあたたかさ
2. 綿と羊毛 ── 吸湿という共通点と、構造のちがい
めんは、めんかという 植物の たねに ついた 毛からできます[3]。かわくと、ねじれた 平たい リボンのような かたちに なります。この かたちのおかげで、糸に する とき 毛どうしが からまり、ほつれにくく なります。
はだざわりが よく、水も すいやすい のですが、ちぢみやすいのが 弱いところです[3]。
ようもうも、水の ふくみやすい 糸です。あるメーカーは、「汗など しめりけを すうと ねつが でる」と せつめいして います[4]。ただし これは 会社の せつめいで、いつでも あたたかい、という いみでは ありません。
綿は、綿花の種子についた毛が元になっています。1本の毛が1つの細胞で、完熟する前は中が空洞の筒です。乾くとその筒がしぼんでねじれ、平たいリボンのような形になります[3]。糸にするときにこのねじれで繊維がからみ合うので、ほつれにくいのです。吸湿性と肌ざわりがよい一方、縮みやすく、しわになりやすいのが弱点とされています[3]。
羊毛は、水蒸気を吸うと熱を出す性質(吸湿発熱)があり、繊維表面のうろこ状の組織がその熱を包んで、暖かさを保つ、とアウトドア用品メーカーのモンベルは説明しています[4]。ただしこれは企業の説明です。「羊毛だけが発熱する」「必ず暖かい」とまでは言えません。
綿も羊毛も「水分となかよし」という点は同じです。この「水を含みやすさ」を、国は数字で表にしています。その数字はどんな意味なのでしょうか。
綿は、綿花の種子の毛で、1本が1つの細胞である。完熟前は中空の筒だが、乾燥すると細胞膜が収縮してねじれ、扁平なリボン状になる[3]。これが糸にするときに繊維どうしのからみを生み、ほつれにくさにつながる。吸湿性と肌ざわりがよい反面、縮みやすくしわになりやすい[3]。
羊毛は、動物繊維の一つで、モンベルの素材解説では、繊維表面のうろこ状組織が吸湿発熱の熱を包み、暖かさを持続させるとされる[4]。ただしこれは企業の説明で、一般に成り立つ事実とは区別して読む。「ウールだけが発熱する」という意味ではない。
2つに共通するのは、水分を含みやすい点である。そこで、この「含みやすさ」を示すとされる数字が、品質表示の規程にどう出てくるかを見る。
3. 「15」と「0.4」は なんの 数字?
3. 羊毛15.0とポリエステル0.4 ── 計算用の数字を読む
3. 公定水分率 ── 混用率を計算するための基準値
きまりの 表には、糸の しゅるいごとに 数字が あります。めんは 8.5、ようもうは 15.0、ナイロンは 4.5、ポリウレタンは 1.0、ポリエステルは 0.4 です[2]。
ようもうと ポリエステルを くらべると、15 ÷ 0.4 で、数字の うえでは やく 37ばい ちがいます。ただし これは、タグの わりあいを けいさんする ための 数字です。「汗を 15% すう」という いみでは ありません[2]。
それでも、水を ふくみやすいか どうかの めやすには なります。ようもうや めんは ふくみやすく、ポリエステルは あまり ふくみません。
4. ナイロンは、いつ 売りだされたの?
4. 絹の代わりに生まれたナイロンと、売り切れたストッキング
4. ナイロンの登場 ── 最初の繊維から、ストッキングの発売まで
ナイロンは、アメリカの デュポン社で つくられた 糸です。1934年、けんきゅうチームの 人が さいしょの 糸を ひきだしたと されます[5]。
1938年に、ナイロンの ストッキングが はっぴょうされ、1940年5月15日に アメリカ ぜんぶで 売りだされました。ねだんは 1ドル15セントです。ほとんどの みせで、お昼まえに 売りきれたと いいます[5]。
この ころ、ナイロンの やく9わりが ストッキングに つかわれました。ナイロンは、絹の かわりに なる 糸として つかわれたのです[5]。
ナイロンは、アメリカのデュポン社で生まれた合成繊維です。同社のカロザースの研究チームのコフマンが、1934年5月24日に最初の繊維を引き出したと、米国のScience History Instituteは書いています[5]。日本語の資料には1935年と書くものもあり、何を最初と数えるかで年が変わるようです。
ナイロンのストッキングは、1938年10月27日に発表され、1940年5月15日に全米で発売されました。1ドル15セントで、多くの店で正午までに売り切れたそうです[5]。1940年にはナイロンの約90%がストッキングに使われました。絹の代わりになる糸として、広く使われるようになったのです[5]。
ただし、発売日は資料によって差があり、1939年10月にウィルミントンで先に売られた、とする説明もあります。ナイロンの糸は、靴下の中では今も補強の役を受け持つ例があります。では、もう一つの重要な糸、のびる糸はどこから来たのでしょうか。
ナイロンの最初の繊維について、Science History Instituteは、デュポン社のカロザースの研究チームのコフマンが1934年5月24日に引き出したと記す[5]。ただし日本語の資料には1935年を挙げるものもある。最初の繊維を引き出した年と、ナイロン6,6を合成した年とが、別の出来事を指している可能性があり、年は条件をつけて読む必要がある。
ストッキングは1938年10月27日に発表され、1940年5月15日に全米で発売された。価格は1ドル15セントで、多くの店で正午までに売り切れ、1940年にはナイロンの約90%がストッキングに回った[5]。発売日にも1939年10月のウィルミントン先行発売という説があり、日付も範囲を示して扱う必要がある。
ナイロンは、絹の代わりとなる繊維としても使われた[5]。だとすれば、靴下の補強にナイロンが入っているのは、丈夫で細く紡げる糸を絹の後継として使い続けてきた名残、と考えることもできるが、これは筆者の推測であり、資料が直接そう述べているわけではない。次は、補強とは逆の「のびる」役の糸を見る。
5. 口ゴムの 糸は、なにで できて いるの?
5. のびる糸、ポリウレタンの出番
5. ポリウレタン弾性繊維 ── ゴムの代わりに使われる糸
くつしたの 口は、のびて ちぢむ ことで、足を おさえて います。この ところの 糸に つかわれる ことが あるのが、ポリウレタンです。
ポリウレタンの 糸は スパンデックスとも よばれ、とても よく のびます。しかも ほとんど いたまないので、ゴムの かわりに つかわれて います[6]。
1950年代の おわりごろに、デュポン社などが 商品に しました。くつした、水着、下着、スポーツ用の ふくなどに よく つかわれます[6]。
6. タグの 数字は、ぜんぶ たすと いくつ?
6. タグの数字は足して100%になる ── 5%の決まり
6. 混用率の書き方 ── 5%未満の「その他」と許容誤差
タグの 数字は、ふつう たすと 100%ぐらいに なります。「ある 糸の おもさ ÷ 全部の 糸の おもさ」で 決まる わりあいだからです。ただし、計算に いれない 糸が ある ときや、少しの ずれが ゆるされる ときも あります[1]。
とても すくない 糸は、「その他」と まとめて 書いても よいと されて います。目やすは 5% みまんです[1]。
ただし、「5% いかは 書かなくて いい」と、どんな ときも いえる わけでは ありません。決まりごとに じょうけんが あります。
タグの混用率は、「ある1種類の繊維の質量÷全部の繊維の質量」で決まります。繊維の名前に百分率を添えて書き、原則として足すと100%になります。ただし、一部の糸が計算から除かれる場合や、許容誤差が認められる場合があります[1]。
混用率が5%未満の繊維は、「その他繊維」や「その他」と書いてよいとされています。また、装飾や縁取りに使う糸で全体の5%以下のものは、計算から除いてもよいという決まりもあります[1]。許容誤差は、一般にプラスマイナス4%以内です[1]。
注意したいのは、「5%以下は書かなくてよい」と一律には言えないことです。条文ごとに条件があるからです。靴下の補強や口ゴムの糸も、合計が5%を超えれば表示が必要になる、とNITEの資料の要旨にあります[7]。
タグの数字は、役目と割合の両方を、一足の中で見せてくれる小さな表なのです。
混用率は、ある1種類の繊維の質量が全繊維の質量に占める割合で、組成繊維すべての名称に百分率を併記する[1]。5%未満の繊維は「その他繊維」「その他」と書ける。装飾・縁取り用の糸で全体の5%以下のものは計算から除いてよい。許容誤差は一般に±4%以内である(別表第五)[1]。
ここで誤解しやすいのは、「5%以下は書かなくてよい」と一律に読んでしまうことだ。5%の線は、「その他」と書ける条件、計算から除く条件、効用を高める糸の合計が5%を超えたら表示が必要になる条件、と、条文ごとに働きが異なる[1][7]。
以上から、タグの数字は、混用率の定義(質量比)を知らないと読み誤りやすい表だと分かる。そして公定水分率は、その計算の側の基準である。では、自分の靴下ではどう読めるのか。
7. じぶんの くつしたで、糸を さがして みよう
7. 手持ちの靴下のタグを読んでみる
7. 手持ちの靴下で確かめる ── タグと見た目の対応
おうちの くつしたの タグを 見て、糸の なまえと 数字を よんで みましょう。ぜんぶ たすと、100ぐらいに なるでしょうか。
つぎに、くつしたの 口、かかと、つま先を よく 見て、さわって みます。ほかの ところと ちがう 糸が ありそうですか。見て わかるのは、糸の ちがいまでです。タグの 糸の なまえと 見くらべて、どの 糸の やくわりか かんがえて みましょう。ただし、はさみで ほどいたり しないでね。
タグには のっていない 糸が ある かもしれない、と おもったら、かぞくに きいて みても いいですね。
家にある靴下で、次のことを試せます。
まず、タグの繊維名と数字を読み、足して100%前後になるか確かめます。次に、口ゴム、かかと、つま先の糸の見た目や手ざわりを、ほかの部分と比べます。手で軽くのばしたり、さわったりして分かるのは、糸のちがいまでです。どの素材がどんな役目なのかは、タグの表示と見比べて考えます。靴下をほどいたり切ったりする必要はありません。
「その他」とだけ書かれた糸があれば、5%未満の糸かもしれません。名前が書かれていない理由を、5%の決まりから考えると、タグの読み方が深まります。
手持ちの靴下のタグで、①繊維名の質量比が合計ほぼ100%になるか、②5%未満の「その他」が含まれるか、③口ゴムやかかとの糸の質感がほかの部分とどうちがうか、を確かめられる。
公定水分率の数字(羊毛15.0、ポリエステル0.4など)を、自分の靴下の割合にかけて考えるときは、これが混用率の計算用の基準であり、吸水量や快適さの保証ではないことを忘れないようにしたい。
原典に近いのは、消費者庁の繊維製品品質表示規程のページである。表示の定義や別表の条件が書かれている。ナイロンの歴史は、Science History Instituteの記事(英語)が出発点になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
以下は、本文で使った資料です。企業の説明や要旨のみの資料は、その旨を本文に書きました。
- 消費者庁「繊維製品品質表示規程」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/law/law_04.html (混用率の定義、5%未満の扱い、許容誤差)
- 消費者庁「繊維製品品質表示規程」2016年版ページ https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/law/law_04-2016.html (別表第二の公定水分率)
- コトバンク「木綿」(日本大百科全書・世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/%E6%9C%A8%E7%B6%BF-142758 (綿の構造と性質)
- モンベル 素材解説(メリノウール) https://webshop.montbell.jp/material/aboutmaterial/maker/maker49.html (吸湿発熱。企業の説明)
- Science History Institute, "Nylon, a revolution in textiles" https://www.sciencehistory.org/distillations/nylon-a-revolution-in-textiles (ナイロンの発明とストッキング。英語)
- コトバンク「スパンデックス」 https://kotobank.jp/word/%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-84630 (ポリウレタン弾性繊維)
- NITE(製品評価技術基盤機構)の靴下の組成表示に関する資料 https://www.nite.go.jp/data/000004541.pdf (靴下の糸の役目の例。要旨のみ)
- グリーンビーンズ 商品ページ(市販靴下の表示例) https://greenbeans.com/products/14973996081120/details (表示例の一つ)
なおした ところ
更新履歴
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