1. タコスの おみせは、どれくらい ちかくに あるの?
1. 家から400メートル以内に屋台がある人は、どれくらいいるのか
1. 14万5634件の屋台と店 ── 「巻けるもの」が具になる
400メートルは、がっこうの うんどうじょうの トラックを 1しゅう する くらいの ながさです。おとなの ふつうの あるく はやさで、5ふんほどだと かんがえられます。
メキシコシティの けんきゅうしゃは、ひとの 95%ほどが、いえから それだけの きょりに タコスの おみせが あると はなして います(けんきゅうしゃの みつもりです)[2]。メキシコぜんたいでは、14まん 5634けんの おみせが あるそうです。いちばん おおいのは メキシコしゅうで、つぎが ベラクルスしゅうと ハリスコしゅうです[1]。
では、タコスとは なんでしょう。メキシコの じしょは、とうもろこしか こむぎの トルティーヤに、まめ、やさい、ソース、にくなどを つつんだ たべものと せつめい して います[4]。
メキシコの ぶんかしょうの しりょうには、「まける ものの かずだけ、タコスの しゅるいが ある」と いう ことが かいて あります[3]。
だから ぐは、ほんとうに いろいろです。まず、いちばん ていばんの にくから みて みましょう。
400メートルは、大人がふつうに歩いて5分ほどの距離です。これは分速80メートルとして私が計算した目安で、資料の数字ではありません。
首都メキシコシティの研究者は、95%ほどの人が自宅から400メートル以内にタコスの屋台を持っていると、ほぼ言えると話しています。統計ではなく、研究者の見積もりです[2]。国全体では、タコスの屋台や店は14万5634件あります。最も多いのはメキシコ州で、ベラクルス州とハリスコ州が続きます[1]。
これだけ多いと、具も一つには決まりません。メキシコの辞書は、タコスをトウモロコシか小麦のトルティーヤに、豆、野菜、ソース、肉などを包んだものと説明しています[4]。メキシコ文化省の資料はさらに進んで、巻ける食べ物の数だけタコスの種類があると述べています[3]。
皮も一つではありません。中央部のトウモロコシのトルティーヤに対して、北部には小麦粉のトルティーヤで作る「北部風のタコス」があります[3]。
では、いちばん定番の肉の具は、どんなふうに作られているのでしょうか。
400メートルという距離は、大人の徒歩で5分前後にあたる。分速80メートルを仮定した筆者の概算であり、資料の数値ではない。研究者はUNAMの広報誌で、メキシコシティの95%の人が自宅から400メートル以内にタコスの屋台を持つと、ほぼ言える水準だと述べた[2]。これは研究者の発言で、全住民を数えた統計とは限らない。
全国の規模は、別の記事に出ている。タコスの屋台や店は14万5634件あり、最多はメキシコ州で、ベラクルス州、ハリスコ州と続く[1]。これほど多ければ、具が一種類に収まらないのは当然だ。では、メキシコ側は「タコス」をどう定義しているのか。
メキシコ・エル・コレヒオの『メキシコ・スペイン語辞典』は、トウモロコシか小麦のトルティーヤを折るか巻き、豆、野菜、ソース、肉などを包んだものとする[4]。定義は皮と包み方に置かれ、具は例示にとどまる。文化省の資料も、巻ける食べ物の数だけ種類があるとする[3]。
皮にも地域差がある。中央部はトウモロコシ、北部には小麦粉のトルティーヤによるタコスがある[3]。具と皮の両方が土地で分かれるわけだが、まず代表的な肉の具が、どう作り分けられているかを見る。
2. ていばんの にくの タコスは、どう ちがうの?
2. 定番の肉のタコスは、土地ごとにどう作り分けられているのか
2. 豚・牛・混ぜ合わせ ── 肉のタコスが土地で分かれる理由を読む
ミチョアカンしゅうの 「カルニタス」は、ぶたの にくの タコスです。あかみの ほか、みみや ほほ、しんぞう、かわなど、ぶたの いろいろな ぶぶんを つかうと、ぶんかしょうの しりょうに あります[3]。
「アル・パストール」は、あじを つけた ぶたにくに、たまねぎ、コリアンダー、きざんだ パイナップルを そえます[5]。くだものが はいって いて、びっくり しませんか。
「カンペチャノ」は、ふたつ いじょうの にくを あわせた タコスです。ぎゅうにくと、ソーセージを まぜる ものが あります[4]。
ユカタンはんとうの 「コチニータ・ピビル」は、アチオテという ソースに つけた ぶたにくを、バナナの はで つんで、むしやきに します[4][6]。
にくだけ でも、ずいぶん ちがいます。では、うみの ちかくでは どうでしょう。
肉のタコスだけでも、土地ごとの工夫がそれぞれ違います。
ミチョアカン州のカルニタス
カルニタスは、ミチョアカン州が発祥の豚肉のタコスです。赤身だけでなく、耳、ほほ、心臓、皮など、豚のさまざまな部位が具になると、文化省の資料は並べています[3]。一頭を無駄にしない食べ方とも読めますが、資料がそう説明しているわけではありません。
パイナップルをのせるアル・パストール
アル・パストールは、味つけした豚肉に、玉ねぎ、コリアンダー、刻んだパイナップルを添えるのが伝統的な形です[5]。甘酸っぱい果物が肉に合うのは、少し意外です。この料理は中東の調理法に起源があるという説が、大学の記事で紹介されています[5]。ただ、どんな経路で伝わったのかは、一つに決まっていません。
混ぜるカンペチャノと、蒸し焼きのコチニータ・ピビル
カンペチャノは、2種類以上の肉を合わせたタコスです。牛肉とソーセージの組み合わせなどがあります[4]。ユカタン半島のコチニータ・ピビルは、アチオテの赤いソースに漬けた豚肉を、バナナの葉で包んで蒸し焼きにします。辞書には、地面の下で調理する方法も書かれています[6]。
肉の具だけで、豚と牛、串焼きと蒸し焼きに分かれました。では、海や湖のそばでは、何が具になるのでしょうか。
肉の具は、部位と調理法で細かく分かれる。ミチョアカン州発祥のカルニタスは、豚の赤身、耳、ほほ、心臓、皮など多様な部位を使う[3]。部位が多彩なのは、豚一頭を余さず使う食文化とつながるように見えるが、資料はその因果を述べていない。
アル・パストールは、味つけした豚肉に玉ねぎ、コリアンダー、刻んだパイナップルを添える形が伝統的とされる[5]。UNAMの記事は、中東の調理法の影響を指摘する。トルコ系の移民がプエブラに持ちこんだという説もあるが、伝来の経路を完全に記した記録はなく、確かなことは言えない。
牛肉も含めた肉の組み合わせでは、メキシコの辞書が「カンペチャノ」を、牛肉やスアデロ(牛肉の部位)にロンガニサ(ソーセージ)を合わせるものと定義する[4]。一方、ユカタン州特有のコチニータ・ピビルは、アチオテのソースを染みこませ、蒸す、焼く、地中で加熱する方法があり、アルミホイルやバナナの葉で包んで調理する[6]。
肉の具だけでも、味つけ、混ぜ方、火の入れ方が、土地ごとに違う。では、肉以外の食材はどう組みこまれているのか。まず水辺を見る。
3. うみや みずうみの ものも、タコスに なるの?
3. 海のものだけでなく、湖の小さなエビも具になるのか
3. 海の「ゴベルナドール」と、湖のアコシレス ── 水辺の具を読む
メキシコの のうぎょうしょうの きじには、「ゴベルナドール」と いう タコスが でて きます。うみの もの、つまり かいや えびなどの ぐを いれた タコスで、うみの あじが たべたい ときの、いちばん にんきの タコスだと しょうかい されて います[7]。
みずうみにも、ぐが あります。ぶんかしょうの しりょうには、むかしから ある タコスの なかに、「アコシレス」が でて きます。みずうみに すむ、とても ちいさな エビです[3]。
うみだけでなく、かわや みずうみの めぐみも、タコスの なかみに なって いるのです。
さかなや エビの つぎは、もっと ちいさな いきものの はなしです。
4. むしも、タコスの ぐに なるの?
4. 昆虫は、タコスの具として食べられているのか
4. アリの卵とバッタ ── 昆虫の具をどこまで言えるか
メキシコでは、むしも たべものです。アリの たまご、「エスカモレス」は、タコスの ぐに なります。バッタの なかま、「チャプリネス」も、おなじです[3]。
だいがくの しりょうに よると、むかしの ひとたちは、マゲイと いう しょくぶつに つく むしを ふくめて、たくさんの しゅるいの むしを たべて いました[8]。
たべものが ちがえば、あたりまえが かわります。にほんの わたしたちは、すこし びっくりしますが、メキシコでは むかしからの たべものです。
ここまでは、にくや さかな、むしの はなしでした。では、やさいや まめだけの タコスも、あるのでしょうか。
メキシコ国立自治大学の記事は、昆虫を、メキシコ料理の重要な食材として紹介しています。アリの卵のエスカモレス、バッタの仲間のチャプリネスなどが、先住民に由来するタコスの具として文化省の資料に挙がっています[3]。
記事によると、昔の人々はマゲイにつく虫など、とても多くの種類の昆虫を食べていました[8]。昆虫は、最近の話題ではなく、昔からの食材の一つだったことが分かります。
ただし、資料はタコスの具としての昆虫が、実際にどれくらい食べられているのかまでは述べていません。
虫や肉に比べて、野菜や豆はどう扱われているのでしょうか。
昆虫の具は、メキシコの料理として紹介されている。UNAMの記事は、昆虫を料理の重要な食材として扱い、人々がマゲイにつく虫をはじめ多くの昆虫を食べてきたと述べる[8]。エスカモレス(アリの卵)やチャプリネス(バッタ)は、文化省の資料でも先住民に由来するタコスの具に挙がる[3]。
ただし、この記事は食文化の紹介であり、タコス屋で昆虫の具がどの程度の割合を占めるかという数字は挙げていない。一部の地域や店の話を全体に広げることはできない。UNAMの記事は、イダルゴ州の一つの自治体で、無計画な採集など複数の要因に関連して昆虫の個体数が減ったことにも触れている。
昆虫は肉の代わりにもなる、という見方もできるが、この資料はそこまで述べていない。次に、肉を使わない具に目を向ける。
5. にくが ない タコスは あるの?
5. 肉を使わない具は、どれくらいあるのか
5. 豆・葉もの・きのこ ── 肉を使わない具の資料を読む
あります。まず、まめです。しりょうには、フリホレス(いんげんまめ)や そらまめ、チレ・レジェノと いう、なかみを つめた とうがらしが でて きます[7]。
やさいでは、ケリテスという はっぱの やさいや、マッシュルームの なかまも あります[7]。
「タコス・デ・カナスタ」は、かごに いれて はこぶ タコスです。じゃがいもや、ぶたの かわを あげた チチャロン、まめを つぶして いためた ぐが つつまれて います[3]。
だいがくの きじでは、かぼちゃの はなや、とうもろこしに つく きのこ、ウイトラコチェも しょうかい されて います[1]。
にくが なくても、タコスは ちゃんと できるのです。
メキシコ農業省の記事は、肉を使わないタコスとして、ケリテスやマッシュルーム、フリホレス(豆)、そら豆、チレ・レジェノ(詰め物をした唐辛子)を挙げています[7]。
文化省の資料には、かごで運ぶ「タコス・デ・カナスタ」があります。具は、じゃがいも、チチャロン(豚の皮を揚げたもの)、つぶして炒めた豆です[3]。この中でチチャロンは豚由来なので、完全な菜食ではありません。
UNAMの記事は、持続可能なタコスを考える提案として、地元で季節ごとに採れる野菜や豆類を具にすることをすすめています。カボチャの花、ウイトラコチェ(トウモロコシにつく菌)、豆、そら豆、トマト、ケリテス、唐辛子などです[1]。
具の幅は広がりました。では、その具の味を、最後に決めているのは誰なのでしょうか。
農業省の記事は、菜食のタコスの例を列挙している。ケリテス、マッシュルーム、フリホレス、そら豆、チレ・レジェノである[7]。文化省の資料に登場するタコス・デ・カナスタも、じゃがいも、チチャロン、つぶした豆の具である[3]。チチャロンは豚由来のため、完全な菜食ではない点は区別しておきたい。
UNAMの記事は、持続可能性の観点から、地元産で旬の野菜と豆類を中心にした具をすすめる。例はカボチャの花、ウイトラコチェ、豆、そら豆、トマト、ケリテス、唐辛子である[1]。これは大学側の推奨であり、屋台の現状を数えた結果ではない。
肉を使わない具が、全体でどれほどの割合を占めるかを示した数字は、この調査の資料にはない。だが、具の多くが季節の作物や保存のきく豆に支えられていることは、資料の例から読み取れる。では、最後に味を決めるのは誰か。
6. ちかくの おみせで、ぐを くらべて みよう
6. 近くの店で、具を見くらべる
6. 具の選び方と、残る問い
メキシコの タコスでは、さいごに ソースを たします。ソースは、とうがらし、トマト、たね、コリアンダーを まぜた もので、すきな りょうを じぶんで かけて たべると、のうぎょうしょうの きじには あります[7]。
やって みよう。まず、いえから 400メートルの はんいを、ちずで しらべて みましょう。おとなの ひとと いっしょに、まちを あるいて かくにんします。タコスや メキシコりょうりの おみせが あれば、メニューを みます。
そこに かいて ある ぐは、ぶたや うしの にくでしょうか。さかなや えびでしょうか。やさいや まめでしょうか。この 記事に でて きた ぐと くらべて みてください。
おみせが みつからなくても だいじょうぶです。いえに ある たべものを ひとつ えらんで、トルティーヤに つつんだら どんな タコスに なるか、かんがえて みましょう。
メキシコ農業省の記事によると、タコスの味を決める最後の要素はソースです。トウガラシ、トマト、種、コリアンダーを混ぜたソースを、好みの量だけ足して食べます[7]。具が決まったあとも、食べる人が自分の味に仕上げる余地が残っているのです。
自分でもできる確かめ方があります。家から400メートルの範囲を、地図で調べてみましょう。大人と一緒に町を歩いて、タコスやメキシコ料理の店を探し、メニューを見ます。
そこに書かれた具は、豚か牛か、魚介か、野菜や豆か。この記事に出てきた具と見くらべると、日本での具の選ばれ方がメキシコとどう違うか、考えるきっかけになります。
パストールがどう伝わったのかは、一つに決まっていません。タコスの具としての昆虫が、普段どれくらい食べられているのかも、資料にはありません。
原典として、メキシコ文化省の文化情報システム(SIC)の「Los tacos」や、UNAMの『ガセタ』の記事を読むと、この記事が省いた細かい具や土地の名前に出会えます。
具を決める最後の要素は、ソースである。農業省の記事は、トウガラシ、トマト、種、コリアンダーを混ぜたソースが、味の強い印象をつくり、各自が好みで足すと述べる[7]。具は店が用意し、仕上げは食べる人に任される。
定義が皮と包み方に置かれているなら、巻けるものは何でも具の候補になる。家にある食べものを一つ選び、トルティーヤで包んだらどんなタコスになるかを想像してみてほしい。豚か牛か、魚介か、豆か野菜か。選んだ具は、この記事に出てきた土地のどの具に近いだろうか。
自分で確かめるなら、家から400メートルの範囲を地図で調べ、保護者と歩いて、タコスやメキシコ料理の店のメニューを見る。具を豚・牛・魚介・野菜・豆に分類し、本稿の例と比べる。日本の店の傾向を一般化せず、見つかった店の数を記録するだけでもよい。
アル・パストールが中東からどう伝わったのかを示す完全な記録は見あたらず、昆虫の具が屋台の中でどれほどの割合かを示す数字も、今回の資料にはない。原典のメキシコ文化省SICの「Los tacos」やUNAMの記事に当たれば、本稿が省いた具や地名に出会える。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
タコスの定義、店の数、具の種類は、メキシコの辞書、文化省・農業省、国立自治大学(UNAM)の公開資料による。
- UNAM Gaceta「El taco “puede ser un alimento sostenible”」 https://www.gaceta.unam.mx/el-taco-puede-ser-un-alimento-sostenible/ (店の数、持続可能な具の提案)
- UNAM Gaceta「Viaje alrededor de un buen taco」 https://www.gaceta.unam.mx/viaje-alrededor-de-un-buen-taco/ (メキシコシティの屋台の近さ)
- メキシコ文化省 文化情報システム「Los tacos」 https://sic.cultura.gob.mx/ficha.php?table=gastronomia&table_id=94 (種類の多さ、カルニタス、アコシレス、昆虫の具、カナスタ、北部のタコス)
- El Colegio de México「taco」『Diccionario del español de México』 https://dem.colmex.mx/ver/taco (タコスの定義、カンペチャノ)
- UNAM Global「Los tacos de pastor tienen su origen en Medio Oriente」 https://unamglobal.unam.mx/global_revista/los-tacos-de-pastor-tienen-su-origen-en-medio-oriente/ (アル・パストールの具)
- El Colegio de México「pibil」『Diccionario del español de México』 https://dem.colmex.mx/ver/pibil (コチニータ・ピビルの調理法)
- メキシコ農業省「El Taco: Mucho más que un antojo, nuestra identidad」 https://www.gob.mx/agricultura/es/articulos/el-taco-mucho-mas-que-un-antojo-nuestra-identidad (ゴベルナドール、菜食の具、ソース)
- UNAM Gaceta「Insectos, ingrediente clave de la gastronomía mexicana」 https://www.gaceta.unam.mx/insectos-ingrediente-clave-de-la-gastronomia-mexicana/ (昆虫の食材)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。