1. けっきょく、だれが きめるの?
1. 先に答えると ── 決めているのは「誰か1人」ではない
1. 先に答えると ── 値段は「量」と「買い手」の出会いで決まる
さきに 答えを 言うと、ねだんを きめる 人は、1人では ありません。
- 農家は、やさいを つくって 出します。
- 市場では、やさいが どれだけ あつまったか、買う 人が いくらなら 買いたいかで、ねだんが きまります。
- お店は、市場で 買った ねだんに、お店の ひようを たして、ねふだを つけます。
いちばん 大きいのは、市場の ねだんです。東京都の 市場は、ねだんは「ほしい 人と 品物の バランス(じゅようと きょうきゅう)などで きまる」と せつめい しています[1]。
だから、やさいが たくさん とれた 日は やすく、すこししか とれない 日は 高く なりやすいのです。
先に答えを書くと、値段を決めているのは1人ではありません。
- 農家や農協などの産地は、野菜を作って市場に出荷します。
- 卸売市場では、集まった量と、買い手が「いくらなら買う」と考える値段が出会って、卸売の値段が決まります。
- お店は、市場などで仕入れた値段に、店の経費などをのせて値札をつけます。
いちばん大もとになるのは、卸売市場の値段です。東京都の中央卸売市場は、価格は需要と供給のバランスなどで決まる、と説明しています[1]。大阪府も、卸売市場には「セリ」に多くの買い手が参加することで、需給を反映した価格をつくる役割があるとしています[2]。
では、小売店は市場からどれくらい仕入れているのでしょうか。農林水産省の調査(令和4年度)では、小売業者の仕入れ金額のうち、青果物は卸売市場からの仕入れが82.7%を占めました(大阪府の資料が紹介している数字)[2]。野菜の値段を知るには、まず市場を見るのが近道になります。
先に結論を書くと、野菜の値段を決めているのは1人ではない。産地(農家・農協など)が出荷し、卸売市場でその日の入荷量と買い手の需要が出会って卸売価格が決まり、店はその仕入れ値に経費などをのせて小売価格を決める。
東京都の中央卸売市場は、卸売市場の価格を「需要と供給のバランスなどで決まる」と説明する[1]。大阪府も、市場の機能の一つに価格形成を挙げ、卸売業者の「セリ」に多数の売買参加者が加わることで、競争原理によって需給を反映した価格が形成されるとしている[2]。
市場の値段が小売価格に効くのは、店の仕入れの多くが市場を通るためだ。大阪府の資料に紹介された農林水産省の調査(令和4年度)では、小売業者の仕入先別の仕入金額のうち、青果物は卸売市場が82.7%だった。ただし、これは国産に限った数字ではなく、卸売市場以外からの仕入れもある[2]。
2. 市場では、どうやって ねだんを きめるの?
2. 市場の値段は、せりよりも「話し合い」で決まることが多い
2. 市場の取引 ── せり・入札より、相対取引が大半を占める
市場の ねだんの きめかたには、おもに 2つ あります。
- せり。買う 人が 「このねだんで 買いたい」と しめして、いちばん 高い ねだんを 出した 人が 買います。
- 相対。売る 人と 買う 人が 話しあって、ねだんと かずを きめます。
「せり」は テレビで よく 見るので、ねだんは ぜんぶ せりで きまると 思いやすいです。でも 農林水産省の しりょうでは、全国の 中央卸売市場の 青果の 取引の うち、相対が 9わりほどで、せりと にゅうさつは 1わりに みたない、と されて います[3]。
やさいを 出す 農家は、じぶんで ねだんを きめて 市場で 売るのでは ありません。出荷した 人から 品物を あずかって 売る しくみ(いたく)が、おおい と いわれます。売れた ねだんから ひよう(てすうりょう)を ひいた お金が、あとから 農家に とどきます[3]。
せりの くわしい やりかたは、べつの 記事で しょうかいして います。
市場の値段の決め方には、大きく分けて2種類あります。
- せり・入札:買い手が値段を示して競い、いちばん高い値をつけた人が買います。
- 相対取引:卸売業者と買い手が話し合って、値段と数量を決めます[1]。
テレビで見る「せり」の印象が強いので、値段は全部せりで決まると思いやすいものです。ところが農林水産省の資料では、中央卸売市場の青果の取引は、相対取引が9割ほどで、せり・入札は1割に満たないとされています[3]。
もう一つ大事なのは、農家が自分で値段をつけて売るのではないことです。市場の取引では、出荷者から預かった品物を卸売業者が売る「委託」という形が多いとされます[3]。売れた値段から手数料などを引いた代金が、あとで出荷者に決済されます。つまり農家にとって、値段は出荷したあとに市場で決まるものです。
せりのやり方や、指で値段を示す理由は、市場のせりで値段を指で示す理由の記事にまとめてあります。
卸売市場の売り方は、せり・入札と相対取引に分けられる。東京都は、相対取引を「卸売業者と買い手が価格と数量を交渉して決める」方法と説明する[1]。
では、実際の取引ではどちらが多いのか。農林水産省「卸売市場をめぐる情勢」によれば、中央卸売市場の青果の取引は、金額ベースで相対が9割前後、せり・入札は1割に満たないとされる(年度により数字は動く)。せりは、全体から見ればごく一部だ[3]。ただしこれは、全国の中央卸売市場の集計であり、品目や市場によって割合は違うはずだ。相対でも、その日の入荷量や買い手の動きが値段に影響するとされる[1]。
同じ資料では、取引の形態として、出荷者から預かって販売する委託が多いとされる[3]。委託の場合、品物は出荷者のもので、卸売業者は預かって売る。販売代金は、手数料などを差し引いて出荷者へ決済される。農家にとって、値段は出荷した後に市場で決まる。
せりの方式(手やり・機械せり・オークションクロック)の違いは、市場のせりで値段を指で示す理由と、せり・入札・相対取引の使い分けで詳しく扱った。
3. てんきで、ねだんは どう かわるの?
3. 天気で量が変わると、値段も大きく動く
3. 天候と量 ── 豊作で下がり、不作で上がる
てんきで やさいの りょうが かわると、市場の ねだんも かわります。
やさいは、てんきに とても えいきょうされます。農畜産業振興機構(やさいの しごとを して いる 国の きかん)は、こう せつめい しています。ほうさくで たくさん 出ると ねだんは さがり、ふさくで すくなくなると ねだんは あがります[4]。
農家が ひとりで がんばっても、てんきは かえられません。出る りょうを ちょうせつしきれない ところが、やさいの ねだんが うごきやすい わけの ひとつです。
ねだんが さがりすぎると、農家の おかねが へってしまいます。つくるのに かかった おかねを とりもどせなく なるかも しれません[4]。
市場の値段を動かす要因の一つは、天気で野菜の量が変わることです。農畜産業振興機構(alic)は、野菜は天候の影響を受けやすく、生産量は生産者の努力だけでは調整しきれない、と説明しています。豊作で出荷量が増えれば価格は下がり、不作で品薄になれば価格は上がります[4]。
同じ機構の資料は、価格が下がると生産者の収入が減り、生産に必要な費用を回収できなくなるおそれがある、とも書いています[4]。高くなって困るのは買う側、安くなって困るのは作る側です。どちらの方向に大きく動いても、誰かが困ります。
農林水産省も、近年は天候不順によって野菜の価格変動が大きくなっている、と述べています[5]。
市場の値段を動かす要因の一つは入荷量であり、その入荷量を左右するのが天候だ。農畜産業振興機構(alic)は、野菜は天候の影響を受けやすく、生産量は生産者の努力だけでは調整しきれず、豊作で出荷量が増えると価格は下がり、不作で品薄になると価格は上がる、と説明している[4]。
価格が下がりすぎれば、生産者の収入が減り、生産に必要な費用を回収できなくなるおそれがある[4]。農林水産省も、近年は天候不順によって野菜の価格変動が大きくなっているという認識を示している[5]。
なお、値段が下がりすぎたときに農家が出荷した野菜をどうするかは、畑でそのまま処分される野菜の記事で扱った。この記事では「値段の決まり方」に話をしぼる。
4. ねだんが うごきすぎない ように、なにを して いるの?
4. 値段の振れを小さくする2つの工夫
4. 変動をやわらげる仕組み ── 価格安定制度と、毎月の見通し
ねだんが とても うごくと、農家も 買う 人も こまります。そこで、2つの くふうが あります。
- ねだんが さがって 農家が こまった ときに、おかねで たすける しくみ(やさいの 価格あんていせいど)。50年いじょう つづいて います[4]。
- 農林水産省が、「これから やさいの ねだんは どう なりそうか」を しらせます。農家や 買う 人が、出す 時期や 買いものの よていを かんがえる ときの さんこうに なります[5]。
この 見通しは、おもな 産地や 市場の 会社に 話を きいて つくります。ふだんの 年(過去5年の へいきん)の 90〜110%の あいだなら「へいねんなみ」と よばれます[5]。
値段が大きく動くと、作る人も買う人も困ります。そこで、2つの工夫があります。
1つめは、野菜の価格安定制度です。価格が下がったときに、生産者へ差額を補う仕組みで、50年以上続いています[4]。
2つめは、農林水産省が出す「野菜の生育状況と価格見通し」です。平成23年から、主産地や卸売会社などへの聞き取りをもとに、野菜の生育と価格の見通しを公表しています。産地が出荷の時期を判断し、消費者が買い物の計画を立てるための参考にして、供給と価格の安定につなげるのがねらいです[5]。
この見通しでは、過去5年の平均を基準にして、その90%以上110%以下を「平年並み」と呼びます[5]。
価格の振れを小さくする工夫は、少なくとも2つある。
1つは、野菜の価格安定制度。価格が下がったとき、生産者の収入が減りすぎないよう差額を補う制度で、50年以上続いている[4]。
もう1つは、農林水産省の「野菜の生育状況と価格見通し」の公表だ。産地が出荷の時期を考えたり、消費者が買い物の予定を立てたりする参考にして、供給と価格の安定につなげるため、平成23年から主産地や卸売会社などへの聞き取りをもとにまとめている[5]。価格は過去5年平均との比率で評価し、概ね90%以上110%以下を「平年並み」とする。東京都中央卸売市場の指定野菜の平年比は、PDFで添付されている[5]。
値段の動きを、あらかじめ共有しておく。値段を「決める」だけでなく、「ならす」ための情報も、流通のなかで用意されている。
6. じぶんでも しらべて みよう
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
お店で、キャベツや きゅうりの ねだんを、1しゅうかん ノートに かいて みましょう。きょうは 高い、きょうは 安い。てんきと くらべて、きづいた ことを かいて みましょう。1しゅうかんでは りゆうまでは わからなくても、ふしぎな ことが 見つかります。
農林水産省は、1しゅうかんに 1回、キャベツ・ねぎ・レタス・じゃがいも・たまねぎ・きゅうり・トマト・にんじん・はくさい・だいこんの 10しゅるいの ねだんを、全国の お店で しらべて、ひょうに して います[7]。おうちの 人と いっしょに、ひらいて みましょう。
東京都の 市場の サイトでは、「市場の 日ほう」も 見られます[8]。お店の ねだんと 市場の ねだんを くらべると、なにが わかるでしょうか。
いつも行くお店で、キャベツやきゅうりの値段を1週間ノートに書き、天気と見比べてみましょう。
農林水産省は、キャベツ、ねぎ、レタス、じゃがいも、たまねぎ、きゅうり、トマト、にんじん、はくさい、だいこんの10品目の小売価格を、週に1回、全国の量販店(各都道府県10店舗、合計470店舗)で調べています。結果はPDFで公表され、過去の推移のExcelもダウンロードできます[7]。
東京都中央卸売市場のサイトには「市場取引情報」の欄があり、そこから日報にたどりつけます[8]。お店の値段と市場の値段を見比べて、ずれがあるかどうかを探すのも面白いでしょう。
近所のスーパーで、キャベツやきゅうりの値段を1〜2週間記録し、天気と見比べると、気づくことがある。1〜2週間では理由までは分からないが、「天候→量→値段」の流れを考えるきっかけになる。
農林水産省は、キャベツ・ねぎ・レタス・じゃがいも・たまねぎ・きゅうり・トマト・にんじん・はくさい・だいこんの10品目の小売価格を、週に1回、全国470店舗(各都道府県10店舗)の量販店で調べ、PDFと過去の推移のExcelで公表している[7]。東京都中央卸売市場の「市場取引情報」から日報を開けば、市場側の動きも追える[8]。両者を並べて、市場と店の動きにずれがあるかを探してみよう。
もっと読むなら、農林水産省「食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)」の最新の結果(令和4年度)が、この記事で使った平成25年度の数字とどう違うかを比べると、流通の変化も見えてくるだろう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:東京都・大阪府・農林水産省の資料と、農畜産業振興機構の資料を使いました。取引の割合や小売価格の内訳は調査年度が異なります。割合は年度や集計の範囲で変わるため、最新の数字は各資料で確かめてください。
- 東京都中央卸売市場「価格はどうやって決まるのですか」。 https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/shikumi/44930 (需要と供給のバランスなどで決まること、せり売・入札・相対取引の説明)
- 大阪府「卸売市場」(流通対策のページ)。 https://www.pref.osaka.lg.jp/ryutai/shijo/ (市場の集荷・分荷・価格形成の機能、小売業者の仕入先別仕入金額に占める卸売市場の割合82.7%(令和4年度調査)の紹介)
- 農林水産省「卸売市場をめぐる情勢」。 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/attach/pdf/index-220.pdf (中央卸売市場の青果の取引構造。相対取引が大半でせり・入札は1割未満という大づかみの傾向。数字は年度で変わる)
- 農畜産業振興機構「野菜価格安定制度を紹介します!」(広報webマガジン「alic」2025年11月号)。 https://alic.go.jp/koho/kikaku03_001717.html (天候の影響、豊作と不作での価格の動き、価格安定制度が50年以上続くこと)
- 農林水産省「野菜の生育状況と価格見通しについて」(令和7年4月30日公表分)。 https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/engei/250430.html (公表の趣旨、平成23年から、天候不順による価格変動の拡大、「平年並み」の目安)
- 農畜産業振興機構 野菜情報「食品流通段階別価格形成調査・青果物経費調査の概要について」(2015年11月)。 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1511_chosa02.html (平成25年度調査の、小売価格に占める生産者受取価格46.0%、品目別の割合)
- 農林水産省「野菜の小売価格調査」。 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/kouri/k_yasai/h22index.html (10品目を週1回、470店舗で調べていること)
- 東京都中央卸売市場「東京都中央卸売市場日報」。 https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/nippo (市場取引情報として日報が公開されていること)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。